2013年3月31日日曜日

エクリプス拡張:古代種族の夜明け(エクリプス9人会)

今は昔、と始めたくなるほどに時が経ってしまったし、参加者レポートもすでに何件か出ていて屋上屋を架すを地で行っているような気もするけれど。


3月某日、拡張が出てマックス9人プレイ可能となったエクリプスを、どうせなら9人でやろうじゃないか会が開かれた。プレイ結果は他で書かれているので、この拡張自体の感想めいたことを書いておく。私のエクリプス経験は無印を7回で、人類+全種族経験済み。ただし拡張は今回の1回のみだ。

プレイレポートは同卓者の皆様のこちらをどうぞ。

お祭り(Eclipse 9人戦) - pmnjの日記
【プレイ日記】9人エクリプス会&ビッグバントーナメント第四十一夜 - 今日もプレイミス - 楽天ブログ(Blog)
第34回「一大宇宙叙事詩『エクリプス』で9人戦!」: タナカマコトの「手番ですよ。」



この拡張は何種類もの拡張の詰め合わせで、それを自由に組み合わせてゲームに取り入れられる。今回はせっかくの機会なので、入れられるだけ突っ込んだ。


  • レア技術
各種1枚ずつしかないレア技術が加えられた。これは通常技術と一緒の袋に入れ、ターン最初のマーケット補充のときにひかれたら市場の隣に置かれて売り物になる。特に重要なのが「強い強い」と言われる(実際相当に強い)ミサイル対策の技術で、ポイント防御を手に入れればミサイルを撃ち落とすことが可能となる。中性子アブソーバーもミサイル相手に役立つレア技術で、中性子爆弾を無効にする。これがあると守備艦隊が全滅しても、人口キューブを取り除くにはキャノンを当てなければならないため、ミサイル特化しすぎてキャノンが無い艦隊ではそのセクターを支配できなくなってしまう。

総じてバランスを壊すことなく(むしろ改善する方向)、煩雑さもほとんど増さないので、ぜひ入れるべき拡張だ。


  • 進歩
これも研究アクションで購入可能で、各種1枚ずつしかない。レア技術とは異なり、最初から市場の隣りにセットされているので、出てくるのを待つことなくいつでも買える。特徴は科学以外の資源を使って購入するタイルが多いことで、5資金と5資材で買うとただちに科学が12増える、というような両替的タイルや、ワープポータル、勝利点5点分になるものなどヴァラエティに富んでいる。

入れれば戦術の多様性は間違いなく増すし、めんどくさくなるわけでもないので、レア技術ほどではないけれど、これもお勧め。


  • 古代人の故郷
古代船が1枚ではなく2枚乗っている。もちろん支配時の褒賞も大きい。ゲーム最初に、プレイヤーがいない開始位置に配置するので、今回の9人ゲームには入れられなかった。


  • 銀河中枢の奪取
銀河の中心部に銀河防衛システムの代わりに古代戦艦を置く。プレイ感はほとんど変わらないが、だからこそちょっと違うのを試してみるのも悪くない。


  • 古代人の群れ
こいつが一番の問題児だった。古代船3隻入りのヘクスを山に混ぜておく。で、これが配置されると、各ターンの最後に古代船がダイス目によってランダム移動してくるのだ。序盤にこれが本拠地の隣に置かれたら、侵攻されても大丈夫なように軍備強化に注力せざるを得ず(本拠地を落とされたらさすがにゲームオーバーだ)、結果他にリソースを回せずに脱落気味になってしまう。中盤以降に引けたらむしろ美味しいエサなのだが、それまでタイルが残っていることはまずない。特に7-9人戦の場合は悲惨で、ヘクスタイルはあっという間に枯渇するので、古代船対応にまごまごしているとろくに支配地拡張もできず、したがって収入も低いままだ。

エクリプスで最も運要素が強いのが探索タイルめくりだが、それをより強くしている。この拡張セットのなかで、これだけは余りお勧めできない。


  • ワープポータル
そのままの意味で、ワープできるヘクスである。エクリプスは移動の自由度が相当に制限されたゲームなので、特に銀河が広い場合はぜひ入れるべきだ。


  • 2人同時プレイ
アクションマーカーを2つ回すことによって、2人が同時に手番を行う。ルールを読んだときは酔狂で入れたものとしか思えなかったが、意外と機能することに驚いた。ただしもちろんプレイヤーによるので、厳密なプレイを好む人にはまったくもって薦められない。極端に言うと、パーティゲーム化する。しかしこれを入れなければ、9人プレイなどできたものではない。今回は5時間半で終わったが、これが無ければ余裕の10時間コースだっただろう。


  • 同盟
同盟相手と一緒に敵と戦ったり、同盟相手の領域をノーペナルティで通過したりできる。最終勝利点は同盟員の平均点となる。

レア技術と並ぶこの拡張の目玉だろう。前述のようにエクリプスは移動の自由度が小さい(他人の領域に入った時点で宣戦布告となる)のだが、このルールのおかげで移動範囲がぐっと広がる。もちろん戦術の幅も広がり、戦闘型の種族が守りを固め、その後方で建造有利種族がモノリスを建てまくる、といったことも可能となる。最終ターン以外なら同盟を抜ける(ペナルティ3点)こともでき、仲間だからといって完全に信頼して良いわけではない。モノリス警護を任せ、自領域内に船をたくさん入れさせていたら、裏切りによってすべて奪われてしまった、なんてことも起こりうるのだ。


BGGではエクリプスをユーロゲームとするひとが多い。これはさすがにどうかと思うのだが、4x系マルチの系譜から見れば、相当にユーロ寄りなハイブリッドであることも明らかだ。なんといっても、原理的には他プレイヤーと戦闘をしなくても勝てるのである。しかし日本ではむしろ重量級ゲームとして受け取られ、「なのにマルチとして物足りない」という風に見る向きもある。実は私も結構それに近い感想を持っている。スマートと評される部分に、丈の足りなさを感じてしまう。


この拡張、というよりも同盟拡張によって、エクリプスのマルチ性は大幅に増した。「叩くべき相手」に攻撃が届く可能性が増し、誰と同盟を組むのか、組むとして裏切るのか、裏切るのならいつ裏切るのかなど、政治的判断を要する機会が多くなっている。しかもメカニクスの「スマートさ」はそのままだ。バニラのエクリプスを気に入らなかった人にこそ、試してもらいたい。

と言っても私が次にエクリプスをやるのは、多分来年、新しい拡張が出たら(アナウンスもなにも無いが、出る予感がびんびんである)ということになりそうだ。世の中面白いゲームはたくさんあるのですものね。