2013年4月18日木曜日

Full Metal Planete日本語ルール

参考
http://boardgamegeek.com/filepage/2249/full-metal-planet-english-rules-doc
http://fullmetalplanete.com/
http://www.fullmetalgalaxy.com/
http://fullmetalplanete.free.fr/fullmetalplanet.html


1.ゲームの目的


1.1 目的
プレイヤー中で最大量の鉱石とユニットを持って、フルメタルプラネットを去ること。

1.2 ゲームの概要
プレイヤーの母艦は鉱石採掘のためフルメタルプラネットに着陸する。この採掘は21もしくは25ターン続く。各プレイヤーは手番を順々にプレイする。プレイはアクションポイント制。

◯ゲーム中にできること
・輸送ユニットを用いて鉱石をとり、母艦に運ぶ。
・鉱石を原料に、風見鶏(ユニット名)を用いて追加ユニットを作成する。
・攻撃ユニットを用いて敵ユニットを破壊/捕獲する。
・マップ上の戦略重要地点を抑え、敵の邪魔をする。
・敵の母艦を捕獲してユニットを増加させる。またボーナスアクションポイントを得る。
・おっかない敵と不戦条約を結ぶ[強制力はない。要は交渉できるということ]。

うまくやれば[途中敗退しなければ]、21か25ターン目(各自が選択)に母艦は離陸する。母艦にある各ユニットが1勝利点、各鉱石が2勝利点。最大勝利点プレイヤーがゲームに勝利する。


2.プラネット


2.1 マップ
マップはヘクス状のマスで構成されている。
茶色は陸地、灰色は山、青は海、茶色に青点は湿地、青に茶点は浅瀬。
各ヘクスには1つのもの(ユニット、鉱石)しか入れない(移動を妨害する)。橋は例外。

http://fullmetalplanete.com/

2.2 潮
各ゲームターンで潮の干満が変化しうる。満潮、通常、干潮。
・通常のとき、浅瀬は海、湿地は陸地として扱う。
・満潮のとき、浅瀬と湿地は海として扱う。
・干潮のとき、浅瀬と湿地は陸地として扱う。

潮の変化により地形が変わり、陸上ユニットが海上にいる場合は沈み、水上ユニットが陸上にいる場合は座礁する。どちらもそのターンは無機能化され、なにも行えず、そのヘクスに固定される。しかし捕獲されたり破壊されたりはする。この状態は地形が自身にあったものに戻るまで続く。

沈んだり座礁していても、ヘクスは占有する。


2.3 鉱石
◯配置
鉱石はマップ全体に配置されている。母艦に積み込むことで勝利点となるし、追加のユニット作成に使うこともできる。
鉱石はヘクスを占有するので、移動の障害物となる[橋以外のすべてのユニットはヘクスを占有する]。

◯使用法
鉱石を扱ったアクションは6つ。
・母艦か輸送ユニットに積み込む。
・輸送ユニットをつかって輸送する。
・輸送ユニットから排出する。
・輸送ユニットから他輸送ユニットまたは母艦に受け渡す。
・風見鶏でユニットにする。
・攻撃ユニットで破壊する。

3.アクションポイント(AP)


3.1 配分
ターン1とターン2:なし。
ターン3:5点
ターン4:10点
以下15点。この15点が基本点。
追加母艦(敵の母艦を捕獲する)ごとに+5点ボーナス。

3.2 保存
APを残しておくこともできる。これは次以降の手番で使用できる。
保存できるAPは5点か10点で、最大合計10点。端数は切り捨て。保存した5APごとにキューブ1個をとって記録する。

3.3 アクションコスト
・移動:1ヘクスごとに1AP[母艦は移動不可]
・母艦の出入り(母艦への/からの移動):1AP
・積み込み、排出、受け渡し:1AP
・(風見鶏に積載済みの)鉱石をユニット化:1AP
・ユニットもしくは鉱石を破壊:2AP
・砲塔の修理(捕獲した砲塔のみ):2AP
・母艦の離陸:1~4AP(損傷状態による)

荷船は2ヘクスを占有する唯一のユニット。新たなヘクスに荷船の一部が乗るたびに1AP。
[このゲームは向きの概念がないので、向きを変えるのにAPはいらない]。
荷船を母艦に入れるには、どちらかのヘクスが隣接していれば良い。1AP。

3.4 時間
各手番は3分以内に行わなければならない。移動中に制限時間を超えてしまったら移動できない。攻撃中だったら、その攻撃は実施される。
手番プレイヤーの手番が終了したら、ただちに次のプレイヤーの手番となる。
3分ルールには厳格に従わなければならない。このルールのもたらす混乱が、フルメタルプラネットの特性のひとつなのだ。

4.ユニット


・攻撃ユニット:戦車(陸上)、重戦車(陸上)、ボート(水上)。
・輸送ユニット:カニ(陸上)、風見鶏(陸上)、荷船(水上)。
・橋
・母艦(陸上。移動不可)。

下図は左上から戦車、重戦車、カニ、風見鶏、荷船、母艦、ボート、橋、HQ(母艦を水平に見た図)


5.輸送


5.1 カニと荷船
輸送ユニットには2種類ある。
・カニは陸上ユニットで、積載量2スロット。
・荷船は水上ユニットで、積載量4スロット。

カニは以下のユニットを積載可能:重戦車(1スロット)、戦車(1)、橋(1)、鉱石(1)。
荷船は上に加え、カニ(2スロット)、風見鶏(2)も積載可能。
[荷船に重戦車を積載したカニを乗せたら、それで3スロット分]

5.2 積み込みと排出
◯積み込み
隣接ヘクスにあるものを積み込める。
敵の射程圏内にあるものは積み込めない。
積み込まれるユニットは座礁したり沈んでいてはならない(橋はこの状態にならない)。

積載されたユニットは無機能化状態となる。
積載されたユニット間、および積載しているユニットとの間の積載物移動にAPはかからない(要はユニット排出時にAP消費せず、そのユニットにものを載せてよい)。
積載に要するAPは1。

◯排出
隣接ヘクスに排出できる。
排出先ヘクスは空白か、橋だけがあるか、積載可能な他輸送ユニットがいるか、のどれかでなければならない。
橋の上に橋を排出できない。
水没したヘクス(浅瀬か湿地)にユニットを排出できるが、そのユニットはただちに沈む。
排出先ヘクスは敵の射程圏内であってはならない。
排出(もしくは受け渡し)に要するAPは1。

6.風見鶏


6.1 ユニット作成
風見鶏で新たなユニットを作成できる。
作成できるユニットは戦車、カニ、橋。[重戦車や荷船、風見鶏は作れないことに注意。これを増やすには敵のそれを捕獲するしかない]
積載済みの鉱石を消費し、選択したユニットを共通ストックから取って隣接ヘクスに配置する。
1体の風見鶏の作成アクション回数は1手番に2回まで。ただしカニと橋は1手番にそれぞれ1つしか作れない。
作成したユニットを敵の射程圏内に配置することは不可[敵の射程圏内には、攻撃時を除きこちらから入ることは不可能]。
作成に要するAPは1。

[共通ストックにあるユニット数は有限。また破壊されたユニットはゲームから除去]。


6.2 天気予報
潮状態の変化(各ターンの最初)の後、機能している風見鶏の所持者は次ターンの潮状態を知ることができる(次の潮カードを見られる)。

7.橋


橋が置かれたヘクスは陸地扱いとなる(よって水上ユニットの移動を妨げる)。
橋は輸送ユニットによりヘクスから取り上げ、積載することができる。
橋は置かれた瞬間から中立ユニットとなる。取り上げるのに捕獲する必要はない。
橋は陸地からつながるように置いていかなければならない。
敵の射程圏内には橋を配置できない。

取り上げられたり、破壊されたり、または潮によって陸地から分断された橋はすべて破壊され、ゲームから除外される。

破壊された橋の上にあったものも、すべて破壊される。

8.攻撃


攻撃ユニットは母艦の本体を除くすべてのもの(ユニットおよび鉱石)を破壊できる(母艦の砲塔は破壊可能)。また相手ユニットを捕獲したり、射程圏を形成して敵を寄せ付けなくできる。

8.1 破壊
破壊には2体の攻撃ユニットによる連続攻撃(ゲーム内では同時攻撃扱い)が必要。1体だけの攻撃ユニットでは破壊も防御(射程圏の形成)も行えない。[1体だけでの攻撃は何の意味もない]
破壊のAPコストは2。1回の攻撃で1消費なので。

砲塔、戦車、ボートの射程は2ヘクス。重戦車は3ヘクス。山にいる戦車の射程は3ヘクス。
目標との間にあるいかなるものも遮蔽物とはならない。

重戦車は山に入れない。積載状態でも不可。
手番終了時に自分の戦車が隣接しており、どちらも山にいる状態にはできない[ヴァリアント:できないかわりに次手番のAPが-5点]。

各攻撃ユニットは1手番に2回までしか攻撃できない(弾薬消費)。攻撃と攻撃の間に他アクションを行ってよい。
自陣営ユニットの破壊は行えない。
破壊されたユニットのあるヘクス上のすべてのものが破壊される(橋、積載物)。

荷船(2ヘクスを占有)破壊には、どちらかのヘクスを同時攻撃する。

http://fullmetalplanete.com/

8.2 射程圏
「射程圏」とは、「同じプレイヤーの複数の攻撃ユニットの射程内にあるヘクス」を言う。
[攻撃時以外、このヘクスに侵入することは不可。またこのヘクス内のものを積載したり、このヘクスに排出したりすることは不可]

http://fullmetalplanete.com/

8.3 射程圏内への攻撃
通常の破壊と同じく、2体の攻撃ユニットで同時攻撃を行う。
その際、攻撃を行う1体目は射程圏内の外にいて、
2体目が射程圏内に入ると同時に攻撃を行う。
この攻撃により、2体目は射程圏から外れなければならない。言い換えれば、そのような攻撃を行えない限り、射程圏内に侵入できない。

2体目は(排出等ではなく)移動によって敵射程圏内に侵入しなければならない。

下図ではボートが1体目、戦車が2体目。



8.4 捕獲
同一プレイヤーの2体の攻撃ユニットが敵ユニットに隣接しているとき、そのユニットを捕獲できる。捕獲したユニットは自陣営のものとなる(色を変更する)。

捕獲に要するAPは1。

このとき、捕獲を行うユニットと目標ユニットは敵の射程圏外でなければならない。なので自分の輸送ユニットを自分の射程圏内に置くことで、捕獲を妨げることができる。

下図ではボート2隻によって敵戦車を捕獲している。



色違いのユニット2体による捕獲(敵の母艦を捕獲した場合のみ起こりうる)は、捕獲したプレイヤーがそのユニットの色を選択する。

8.5 無機能化
手番プレイヤーの射程圏内に敵ユニットがあり、破壊も捕獲もされなかった場合、そのユニットは無機能化される(コマを横倒しにすることによって示す)。

手番開始時に自分のユニットが上記の無機能化を受けている場合、APを消費して敵射程圏内の自ユニットをそれぞれ1ヘクスだけ移動させることができる。ただし移動することによって射程圏外に出られる場合のみ。出られれば無機能化は解除される。

射程圏外に出られなかった/出なかったユニットは無機能化されたままで、その手番では何も行えなくなる。射程圏の形成も行えない(水没や座礁、積載による無機能化の場合も射程圏の形成は行えない)。これを解除するには敵攻撃ユニットを破壊し、射程圏を縮減させる。

手番中でも手番外でも、敵射程圏から外れた瞬間から無機能化は解除される。


砲塔はたとえ射程圏内にあっても無機能化できない。

http://eric.alber.free.fr/xmedia/fmp/regle.pdf 
および 
http://guide.fullmetalgalaxy.com/guide/rules-deviations?language=fr
を参照。
http://fullmetalplanete.com/FMP_Rules_08.html#Destructeurs
にある2段階的無機能化は、他に例がないのでWin版独自ルールと判断した]


9.母艦


母艦は中央ドームと3個のポッド、ポッド上の砲塔で構成される。
ゲーム開始時に母艦を配置(陸地/湿地上)する。母艦は潮の影響を受けない。
砲塔を除き、母艦および母艦の搭載物は破壊できない。
母艦の積載物[母艦の中味はボード外で、各プレイヤーが保管する。保管できる量は無制限]は全プレイヤーが見られるようにしておくこと。

9.1 母艦への出入
3つのポッドのいずれかから出入りする。入るときはポッドの隣接ヘクスから入り、出るときはポッドの隣接ヘクスに出る。中央のドームからは出入りできない。

鉱石を母艦に受け渡しできるが、母艦に渡された鉱石は母艦のから排出されることはない。得点となるまでそのままとなる。

母艦への積載、母艦からの排出の消費APは1。
母艦内での積荷の入れ替えにAPはかからない。

積載についても排出についても、母艦は通常の輸送ユニットと同様に扱う。ただし
・ユニットは敵射程圏内のポッドから出入りできる。ただし入るときにいる/出るときに現れる隣接ヘクスは射程圏外でなければならない。
・ユニットは砲塔が破壊されたポッドから出ることはできない。
・ユニットは砲塔が破壊されたポッドから入ることができる。
[上記では「ユニット」とあるが、鉱石も同様だと思われる。もちろん鉱石が出ることはないが]

9.2 母艦の捕獲
・すべての砲塔を破壊された母艦に
・攻撃ユニットを最初に侵入
させた敵プレイヤーがその母艦を捕獲する。

捕獲された母艦の色は変化しない。その色に属するすべてのユニットは、この瞬間から捕獲プレイヤーの支配下に入り、自由に使用できる。色違いのユニット複数で攻撃したり、捕獲して良い。自分の母艦を捕獲されたプレイヤーはゲームから脱落する。

母艦を捕獲した瞬間から、捕獲プレイヤーの基本APは5増える。以後母艦を1隻捕獲するごとに5ずつ増加する。もちろん失えば5点減る。

1ターンにおける捕獲プレイヤーの手番数は増加しない。1手番内で支配下のすべてのユニットを操作する。

母艦を捕獲したプレイヤーのみが、その手番および続く手番で捕獲した母艦の砲塔修理を行える。
・砲塔1つ修理につき2AP。
・この修理に風見鶏や鉱石は必要ない。
・敵射程圏内の砲塔は修理不可。
・砲塔は修理したらただちに攻撃可能。
[修理した砲塔がまた破壊されたら、他プレイヤーが捕獲しない限り再修理はできないものと思われる]

すべての砲塔が破壊済の母艦への侵入は、味方ユニットが母艦に入るときと同様(入るときにいるヘクスは敵の射程圏内であってはならないが、入るのに用いるポッドは射程圏内であってもよい)。

10.ゲームの手順


セットアップ
3ヘクスごとに鉱石を1つずつ配置する。そうしたら、海ヘクス上にある鉱石を除外する。

各プレイヤーは母艦、色マーカー1セット、荷船1、カニ1、風見鶏1、ボート1、戦車4、重戦車4、橋1をとる。

残りのユニットは各プレイヤーの製造可能物して共通ストックにする。

15枚ある潮カードをシャッフルし、9枚を「将来の潮」の山札とする。残りは捨札(中味は見ない)。

第1ターン 母艦の着陸
キューブを最初のターンスロットに置く(以後ターンが進むごとに移動するのを忘れないこと)。

各プレイヤーは3分間で、自分の母艦着陸地点を選ぶ。母艦には自分の色マーカーをつけること。着陸ゾーンは2つある島のどちらかか、点線で囲まれた部分。母艦は4ヘクスを占有する。

母艦の配置には以下の制限がある。
・ボードの端から最低1ヘクス離れること
・陸地か湿地のヘクスしか使用できない

選択された着陸ゾーン(岸に接した浅瀬も含む)内のすべての鉱石を除外する。

ここで着陸地に合わせ、必要なら席替えをする。

自分の前に置いているユニットが現在母艦内にあるユニットである。すべてに自分の色マーカーをつける。

第2ターン 配置
各プレイヤーは3分間で、自分のユニットのすべて/もしくはいくつかを自分の着陸ゾーンに配置する。水上ユニットと橋は着陸ゾーンの岸に接して置かなければならない。輸送ユニットは他ユニットを積載した状態で配置して良い。

このターンでは潮状態は通常とする。

第3ターン 5AP
スタートプレイヤーを決定する。手番は時計回り。

最初の潮カードを山札からひき、「現在の潮」の場所に置く。このカードが第3ターンの潮状態を表す。風見鶏が機能している(母艦や輸送ユニットに積載されていない、無機能化されていない)プレイヤーは、次の潮カードを見ることができる。

スタートプレイヤーから手番を行う。各手番は3分間で、使えるAPは5点。

第4ターン 10AP
次の潮カードが「現在の潮」となる(以下同様)。
風見鶏が機能しているプレイヤーは次の潮カードを見ることができる(以下同様)。
各プレイヤーの使えるAPは10点。

第5ターン以降
このターンから、各プレイヤーの使用可能APは15点(基本AP)。
11と19ターン目の最初に「将来の潮」山札が切れたら、「現在の潮」カードを除いたすべてのカードをシャッフルし、6枚を捨て、残りを新たな山札とする。そうしたら風見鶏で次の潮カードを見る。

作戦終了

第21ターン
21ターン目の開始時、全プレイヤーは秘密裏にユニットか鉱石を手に隠し持ち、同時公開する。ユニットを見せたプレイヤーは25ターン目までプラネットに残り、鉱石を見せたプレイヤーはただちに離陸する。

離陸を選んだプレイヤーは手番を行うことなくただちに離脱する。なので20ターン終了時の母艦の中味が勝利点となる。勝利点は鉱石1つにつき2点、ユニット1つにつき1点(破壊されていない砲塔1つにつき1点)。

離陸したプレイヤーがプラネットに残したユニットはすべて無機能化される。他プレイヤーはこれを破壊や捕獲できる。

母艦を複数持っているプレイヤーは、どれかを離陸させることもできる。こうした場合、減った母艦分だけ基本APを下げる。

第25ターン
21ターンで残ることを選択したプレイヤーは、通常通りプレイを続け、このターンで離陸する。

離陸は自分の手番の最後に行う。この離陸にはAPが必要。基本1AP+破壊された砲塔1つごとに1AP。なので砲塔2つが壊れていたら3APかかる。

離陸したら、21ターンと同様に勝利点を計算する。最多勝利点のプレイヤーが勝利する。同点の場合は、最も多くの鉱石を持つプレイヤーが勝利する。

注意:消費したAPは取り戻せない。APを使い果たしてしまったプレイヤーは離陸できず、彼の母艦はフルメタルプラネットに残り、錆ついていく運命となる。

2013年4月12日金曜日

OCTGNでAndroid:Netrunner 【プレイ編】

ぼっちプレイのすすめ

いきなり言い訳から入るが、この手の説明を文章と少々の画像だけで行うのはなかなかに難しい。読むだけではなくて、これを参考にして1度1人2役プレイをするのがおすすめだ。なのでまずその方法から。
  1. OCTGNのCustomGamesタブ→Host→Self Hosted Gameにチェック→Start。ちょっと待つとPreGameLobby画面が現れる。
  2. OCTGNをもう1つ起動させる。英語で「もう一方を閉じるか?」と訊かれるが、「いいえ」で。
  3. 2で起動したOCTGNでCustomGamesタブ→Join Offline Game。
  4. IPは1.のPregame Lobbyに表示されているローカルアドレスを入力、Portも同様に入力。GameはAndroid:Netrunnerを選択し、Connect。
  5. 名前を入れろと言われるので、適当に。
  6. 2.のOCTGNもPreGameLobbyに入る。
  7. ここでHost(1の方)プレイヤーはどちらのプレイヤーがA、Bとなるのかを選択できる。AがCorpで、BがRunnerだ。ここでAになったプレイヤーは、絶対にRunnerを選択できないので注意すること。選択したらStartを押す。


上のような画面が出てくるはずだ(Corp側)。

そうしたらまずやることは、デッキをロードすること。左上のLoadDeckから、保存しておいたデッキファイルを選択する。アイデンティティカードと山札が出てくる(この説明ではR&Dとかの用語は必要と気分に応じて使う)。
次にゲームのセットアップをする。プレイエリア(画面中央。青がこちらのプレイエリア、赤が向こう)上で右クリック→Game→Setup。なんかごちゃごちゃメッセージが出るけど、「Tips説明をもっと見たい?」と訊かれてるだけなので「いいえ」で。

手札がずらっと現れる。マリガンしたければ手札があるエリアで右クリ→Mulliganだ。

ところで相手から見れば、こちらがマリガンしたかどうかは画面を見ているだけではわからない。同様にカード効果でクレジットを得たりしても、親切なゲームのようにアニメーションとポップアップがにゅーんと出たりしないので、わかりにくい。

なので画面左下のチャットボックスに注意を払うこと。ここにすべてのゲーム情報が出る。「◯◯はマリガンしました」とか「◯◯は△の効果を使いました。☓クレジット得ました」とか。こちらの情報は黒で、相手の情報はカラーフォントで出る。


両者がセットアップを終えるとこんな感じになる。いよいよゲーム開始だ。

ターンを開始するにはF1を押す。すると


こうなる。Corpのターン開始なので、手札が1枚ドローされている。また手札の上にあるマスの数字が変化している。一番左がクリック数で、これが3になっている。次はクレジット。以下メモリーユニット(空きメモリ)、リンク、アジェンダポイント、悪名、手札枚数、タグだ。チャットボックスには「itarunはターンの強制ドローを行いました。Jinteki(itarun)はターンを開始します。3クリックと5クレジットがあります」と出ている。



基本アクション

このゲームは「半自動」である。かなりのことは自動でやってくれるが、手動に頼る部分も大きい。とはいってもアクションはだいたいが自動で、ラン関連にだけ注意していればほぼ大丈夫だ。

自動アクションの基本はダブルクリックだ。山札をダブルクリックすれば1枚ドローする(そしてクリック数が1減る)し、手札のカードをダブルクリックすればインストールされる(クリック数とクレジットが減る)し、プレイされているカードの効果を使うときも、それをダブルクリックすれば良い。

カードに対して他のことをしたい場合は右クリックから選択だ。たとえばそのカードを捨札にしたいときは右クリ→Trash/Archiveで良い。
またカードに対してではないアクションは、プレイエリアのなにもないところで右クリックから選択する。だが何度もやるアクションでいちいちこれをやっていては面倒臭いので、ショートカットを使うと良い。以下が基本アクションのまとめだ。


  • カードドロー:山札をダブルクリック
  • カードをプレイ:カードをダブルクリック
  • 1クリックで1クレジット得る:Ctrl+C
  • カードを捨てる:カードにカーソルを合わせ、Del
  • カードアビリティを使う:カードをダブルクリック


以上のアクションでは自動的にクリックやクレジットを消費してくれるし、オペレーションなどの効果もだいたいは自動発動してくれる。またコンディショナルアビリティ(ターン開始時に1クレジット得るとか)も自動でやってくれる。

ただしCorpがカードをインストールする場合、それをどのサーバに置くかは手動で行わなければならない。このためにまずリモートサーバをつくる。Cntrl+Sで、横向きの黒っぽいカードがプレイされる。これが各リモートサーバの位置を表すので、これに合わせてインストールしたカードをドラッグする。下の画像は、プレイしたカードを左のリモートサーバに移動している最中だ。


アイスも同様に移動させる必要がある。ここで注意しなければならないのは、各サーバの2枚目以降のアイスのインストールコストは自動処理ではないことだ。なので2枚目以降のアイスをインストールしたら、その分のクレジットを手動で減らさなければならない。


ターゲット

ぼかし入りのカードを使っている場合、カードテキストを見るには右クリ→Inspect(Ctrl+I)でいける。だが相手のカード情報をこれで見ようとしてもできない。これを行うにはまず情報を得たいカードをターゲット化し、次いでプレイエリアで右クリ→Inspect Targetとする。カードをターゲット化するにはそのカードをShift+クリックで、解除も同様だ。複数枚を同時にターゲット化することもできる。この場合Inspectすると、カードテキストが順番に表示される。


このゲームをプレイする上で、ターゲットは非常に重要だ。要は「アクションの前に、そのアクションの対象を指定しておく」のがターゲットである。裏を返せば、アクションを行ってからでは対象を指定できないのだ。


たとえば、上画像のようにDjinnにホストさせてDatasuckerをインストールしたい場合、まずDjinnをターゲット化し、それからインストールする。


Djinnの3MUのうち1をDatasuckerが消費している。


アクションでなくても、たとえばPriority Requisitionを得点したときは、任意のアイスをノーコストでレゾできるのだが、この場合も得点する前にアイスをターゲット化することが必要だ。ただしこの場合はターゲット化を忘れていたら注意が出てやり直せるので問題はない。


ターン終了と開始

クリックを使い終わって、やることをやりきったらターン終了だ。ターン終了はF12を押す。そうしたら相手はF1を押してターンを開始する。なぜここが連続でないかと言えば、ターン終了とターン開始の間に、レゾ、ペイドアビリティ発動、アジェンダ得点ができるからだ。

たとえばPad Campaignをターンの合間にレゾしておけば


F1を押してターンを開始すると同時に効果が発動し、1クレジットもらえる。


とはいってもF1を押すのはつい忘れがちで、「ではさっそくこれをインストールして」などとやってしまう。でもポップアップで注意してくれるから大丈夫。




特殊アクション

陣営別のアクションをまとめておく。どれも自動処理だし、とくに難しいところはない。

◯Corpのアクション
  • レゾ:カードをダブルクリック
  • アドバンス:右クリ→Advance a Card。もしくはALT+A
  • アジェンダ得点:ダブルクリック
  • 3クリックですべてのウイルスマーカーを除去:プレイエリア右手のVirus Scanカードをダブルクリック
  • タグのついた相手のリソースをトラッシュ:トラッシュしたいリソースをターゲット化し、右クリ→Pay and Trash Target (Resource, Asset or Upgrade)。もしくはCtrl+Del
◯Runnerのアクション
  • タグの除去:右クリ→Runner actions...→Remove a tag。もしくはCtrl+R

ラン

ランは恐らくこのゲームで一番自動化が進んでないところだろう。

  • リモートサーバへのラン:F5
  • HQ:F6
  • R&D:F7
  • アーカイブ:F8
または右クリ→Runner Actions→Run on...から選択する。

ランをするときは、どのアイスにアプローチしているかを示すと良い。アイデンティティカードをShift+クリックして、目標のアイスまでドラッグする。特にリモートサーバ相手のときは、どのサーバにアクセスしているのかアクションだけではわからないので、これを示すことが必要だ。


*13/7/29現在、RunしたいサーバをダブルクリックすればRunできる。そのうえ上写真のような矢印まで表示される。アプローチしているアイスを示すのにはターゲット化するのが主流。

Corp側はここで、アイスをレゾするかどうか選択する。チャットでやってもよいし、最新バージョンではこれを宣言するカードがCorpプレイエリア左脇に置かれている。


レゾしないのでどうぞお先に、を示すカード

レゾされたアイスにアプローチしたら、アイスブレイカーを使う。ところでだいたいのアイスブレイカーには複数の効果がある。このため、どの効果を何回使うかを指定する。これはアイスブレイカー以外のカードでも同様だ。



Crypsisをダブルクリックして使用する。使いたい回数分だけ各効果を押したらFinish Selectionだ。ここでは強度を3上げ、サブルーチンを1つブレイクし、Crypsis上のウイルスカウンターを1つ除去、としている(これが自動ではないのに注意)。最下段は1クリックでウイルスカウンターを乗せる効果で、ラン時に使用するものではない。



Crypsisの強度が3アップしている。より詳細な「なにをやったか」はチャットボックスに示されている。


こうして次のアイスにアプローチする。なおランを中止したい場合は、ここでEscを押すとジャックアウトできる。

サブルーチンがブレイクできなかった場合、Corpはアイスをダブルクリックし、効果を発動する。ここで注意したいのは、たとえばサブルーチンが3つあり、2つをブレイクした場合、どれをブレイクしたかはチャットで伝えなければならない、ということだ。

CorpはRunnerの申告に合わせ、複数効果からいくつかを(もしくはすべてを)選んで発動する。効果自体(ランの終了やダメージ等)は自動処理で行われる。ダメージを受けると手札からランダムでカードが捨てられるのだ。ダメージを与える場合、Runnerが手札をいじっているとクラッシュする恐れがある。またダメージを防ぐ効果は基本的に自動発動されるが、発動するかどうかをCorpが決めるときがある(トラッシュのペイドアビリティの場合)。なのでCorp側は発動の前にこの点の確認をとること。ボイスチャットが推奨されているのはこういうわけなのだ。

さて、晴れてすべてのアイスを突破したら、ラン成功である(ここでジャックアウトしても良いが)。ランの成功=サーバへのアクセスはF3を押す。ここでMedium等のカードには自動でカウンターが乗る。

サーバへのアクセス方法はサーバ種ごとに異なる。
中央サーバの場合、F3を押してランが成功したら、「アクセスしますか?」と訊かれる。「はい」を選ぶと、HQやR&D相手の場合は、「何枚アクセスする?」というポップアップが出る。


通常は1枚だが、Medium等で複数枚にアクセス可能な場合は数値を調整する。


1枚ずつ処理していく。アジェンダを引き当てたので、当然最下段の「得点する」を選ぶ。トラッシュできるカードの場合は、「Pay and Trash」というボタンが出るので、トラッシュしたい場合はそれを選択。「Trash at no cost(タダでトラッシュ)」はそういう効果がある場合にのみ選択する。なにもしないでカードを返す場合は「Leave where it is」だ。

アーカイブにアクセスした場合は、アジェンダカードが見つかったときのみ表示してくれる。

リモートサーバの場合。F3でラン成功した後、そのサーバのアクセス可能なカードすべてをターゲット化し(もちろん、その前に相手のレゾやアビリティ発動に時間を与えること)、右クリック→Access Targetを選択する。ただこれだと複数枚に同時アクセスできないので、相手に全カードを開示してもらうか、カードを右クリック→Take Controlして処理してもよい。多分2番目が一番楽だ。


トレース

Corpがトレースを発動させると、強度をどれだけ増加させますか? と訊かれる。


費やすクレジットを決めたらOKを押す。
ランナー側は左下にある黒っぽいカードをダブルクリックする。


同様にどれだけ強化するか訊かれるので、決定する。相手のトータル強度はチャットボックスのメッセージに示されている。繰り返すが、チャットボックスから目を離さないようにしよう。


負けたのでタグがつきました。


カードの開示

カード効果等でのカード開示は、基本的にカードをターゲット化し、効果を発動し、Corpに「これ開示して」と頼む。Corpは対象カードを右クリ→[UN]Exposeする。確認が終わったらもう一度行えば、裏向きに戻る。


山札と捨札

カード効果等で山札の中味を見るときは、自動処理ではないので手動で行う必要がある。山札を右クリ→Look Atだ。上X枚、下X枚の指定と、全カードを見るオプションがある。


上の5枚を見た場合。自由に並び替えができる。手札に入れたいときは、手札エリアまでドラッグすれば良い(もちろんその効果がなければだめだが)。
全カードを見た場合、ウィンドウを閉じるとデッキがシャッフルされる。


手札エリア最上部のGlobalのタブを相手方にすることで、相手の捨札が確認可能だ。他のカードは当然すべて裏向きだが、捨札(Corpの場合は表の捨札)はすべて見られる。ダメージで捨札となったカードの確認に便利だ。





終わりに

以上、お疲れ様でした。なんかこまごましててよくわかんないやと思われるかも知れないが、最初に書いたように1人プレイでまわしてみれば、すぐに理解できると思う。

ここに書いた以外にも、カード効果の適用のさせ方等で細かなことはいろいろとある(アップグレードカードのなかには自動処理されないものが多かったりする)。自動/手動のこまかなところは、けっこう「体で覚える」感じなので、実際に触ってみるのが一番良い(どうせカードはどんどん増えていくし)。それにいざとなれば手動で訂正すれば良いのだから、そこまで気に病むこともない(ただ手動の場合は「これこれこうだからこれしますね」と言語コミュニケーションをとるのが必須だけど)。


わかりにくいところや間違いがあったら訂正するので言っていただけるとありがたい。

そしてもちろんお相手も募集してます。なんのためにこれを書いたかと言えば、当然そのためなのだから。ちなみに私はANRのプレイ経験はそんなにありません。だって相手がいないのだもの。

というわけでコメントは
TwitterID: komi_komiまで、お待ちしてます。

OCTGNでAndroid:Netrunner 【導入編】

今いちばん面白い2人用ゲームはなに? と訊かれたら、第一候補にあがるのはまずAndroid:Netrunner(以下ANR)だろう。LCGがあまり流行らない日本でも、破竹の勢いでプレイヤーを増やしている。有志の方の素早すぎるルール和訳とシール作成のおかげで、プレイ環境も万全と言って良い。

しかしいくらプレイヤー増加中と言っても全体から見れば微々たるもの。凝集しているかのように見える銀河の星々が決して遭遇することのないように、プレイヤーの多くもまた出会うことがない。とどのつまり、相手がなかなか見つからないのである。2人用ゲームはただでさえゲーム会では立てにくいし、このような事前準備がいるゲームは、当日その場で「ではやりましょう」とはなりにくい。こうしてプレイヤーは、というか私は無聊をかこつわが身を嘆くのだ。

しかしリアルがだめならネットがあるではないか。幸いなことにOCTGNなるソフトを使えば、ANRのネットプレイが可能なのである。これで一気にANR充である。素晴らしい。

ところがこのソフト、少々敷居が高い。BSWやYucataなら、ゲームのルールさえ知っていれば、即プレイ開始でもほとんど問題がないのだが、OCTGNはANRのルールだけではなくて、ソフト自体の操作に若干の知識を必要とする。その結果、かどうかは知らないが、日本からのプレイヤーをほとんど見ることがない。というわけでそんなに経験があるわけではないが、簡単な説明を書くことにした。

*現在ではこの方法でインストールできないので、改訂版を参照してくださいな。



OCTGN(オクタゴンと読む)はTCGやLCGをネットで対戦可能にするツールで、たくさんのゲームモジュールが開発されている。もちろんそのうちの1つがANRだ。

  1. ここに行き、FreeDownloadからOCTGNの最新バージョンを落としてインストールする。ここでアカウント登録しておくのを忘れずに。
  2. ここに行き、最新のGameDefinitionとMarkers&Tokensをダウンロードして保存しておく。
  3. ここから最新のカードセットをすべてダウンロードして保存する。4月12日現在、A Study in Staticまで。
  4. OCTGNを起動して、1で登録したアカウントでログイン。
  5. GamesManagerタブをひらく。
  6. GameOptions→Installで、2で保存したGameDefinitionファイル(o8gファイル)を選択してインストール。
  7. 左欄にAndroid:Netrunnerが現れるのでそれを選択。SetOptions→Installで、2と3で保存したすべての.o8sファイルを選択してインストール。


カードセットのファイル(o8s)がCoreを除いて(Censored)になっていることに気づいた人もいるだろう。出版元のFFGとのアレにより、発売から半年間は、カードテキストにぼかしが入れられることになっている。Coreセットもついこないだぼかしがとれたのだ。

カードセットファイルはzipファイルなので解凍し、cardフォルダ内にあるjpgファイルを自分でスキャンした画像に差し替えることで、これを解決できる。日本語テキストの方が良ければ、画像にテキストを乗せれば良い。

ただし、めんどくさければやらなくても大丈夫だ。ぼかしがあるといっても、ゲーム内でカードテキストを確認する方法はあるので、そこまで気に病むことはない。


最後はデッキファイルについて。まずスターターデッキはここ
自分でデッキをつくる場合は、OCTGN上でも可能だが、cardgamedbのデッキビルダーの方がつくりやすい。作成したらSave as OCTGN Deckを選択して保存しておこう。

デッキはゲーム開始時に選択して読み込むので、解りやすい場所にまとめて保存しておくと便利だ。


これでプレイの準備はOKだ。というわけで【プレイ編】に続くよ。

2013年4月2日火曜日

Hinkel & Stein

ボードゲームの魅力のひとつは、ゲームの内容物を実際に手で触れられることだろう。コマをつまんで動かす、カードを揃えて出す、そしてもちろんダイスを振る身体的感覚は、他では味わえない快楽と言える。作り手もこのことは当然承知していて、身体的快楽を前面に押し出したゲームが、ときおり出る。

Zoch Verlagの創始者Klaus Zochは、ボードゲームの身体性を十全に使いこなすデザイナーのひとりだろう。視覚的・触覚的快楽の融合の極致と言えるバウザック、聴覚をゲームに取り入れたザップゼラップやイグルーポップ等、ものに触れること、それ自体が楽しいことに気づかせてくれる。




そのZochが2007年(たぶん)に創立したスモールパブリッシャーがChili Spieleだ。なぜZoch Verlagがあるのに別会社をつくったのか? 生産が困難なことや、予測される利益が薄すぎることなどから、大手パブリッシャーが作りたがらないゲームを世に出すために、と説明されている。このためコスト削減策として小売を通さず、ウェブサイトを通じた直販でのみ販売を行っている。



現在までに彼らが出してきたゲームは6つある。どれも創立理念に沿った、コンポーネントに凝ったゲームだ。この「凝った」の意味は当然、FFG的方向とは正反対の、触れる快楽を見据えた質実な木製の凝り方である。私はFFGのゲームが大好きだ、念のため。

2番目の作品であるDie Aufsteigerは、The Climbersと改題されてアメリカでも出され、そこから日本にも入ってきたので、プレイされた方もいるだろう。ルール的には特筆することはない積み木レースなのだが、しかし積み木の楽しさを十分に生かした佳作だった。




前置きが長かったが、今回紹介するゲームはここの5作目にあたる2010年発売のHinkel & Stein。作者は当然Klaus Zochである。



この作品は一言で説明可能だし、もっと簡単なのはコンポーネント写真を見てもらうことだ。そう、シーソーだ。シーソーに石を乗っけるゲームである。



4人のプレイヤーたちは各々5個1セットの石を持つ。セットごとに石の種類が異なり、色や形も様々だ。他のコンポーネントはシーソーと、勝利点となるチップだ。このチップがまた木製のおおぶりなディスクで、なんとも良いのである。

ゲームは1ディール(ということばを使おう)が5ラウンドで構成される。プレイヤーは毎ラウンドに手持ちの石を1つ使うので、手石は使いきりだ。ラウンド開始時、まずストックからプール(ポーカーで言うポット)にチップが2枚追加される。次に親が今ラウンドの勝利条件を選択する。「重いほうが勝ち」か「軽いほうが勝ち」かだ。そうしたら親はスタートプレイヤーを指定する(自分でも良い)。指定されたプレイヤーは、「行く」と決めたらプールにストックからチップを2枚追加する。もしくは「降りる」と決めたらストックからチップを1枚もらう。どちらの場合でも、自分の石を1つ、シーソーに乗せなければならない。石を乗せるマスは各端に2ヶ所、計4ヶ所ある。

スタートプレイヤーが行くか降りるかして石を置いたら、親は次の手番プレイヤーを指定する(もちろん自分でも良い)。こうして全員が行くか降りるかし、石を乗せ終わったら勝敗判定となる。ラウンド開始時に決定された勝利条件に従って勝者2人が決まり、プールのチップを山分けする。ただし勝者のうち1人が降りていたら、もう1人がプールを独占することになる。どちらも降りていたら、そのプールは次ラウンドまで持ちこしだ。



さて、これだけだとさすがに単純にもほどがあるので、各石セットには特殊能力が加わっている。基本はディールにつき1回だけ発動でき、シーソーの支点をずらしたり、小石を追加で置けたりする。強力なのがプールに2枚ではなく4枚追加できる能力を持つクォーツ石で、親はこのプレイヤーと協力して山分けを狙うのが基本戦術となる。

こうして5ラウンドが終了したら、各プレイヤーは自分の石セットをすべて左隣プレイヤーへとまわす。そうして4ディール、つまり全員が全石種をプレイしたらゲーム終了で、最もチップ数の多いプレイヤーの勝利となる。



将来の重勝ち戦のためにこれは温存しておいて……などと吝嗇心を出して討ち死にしたり、協力するふりをしながら裏切ったり、意外とドラマが起こる。だがそんなドラマも言ってみれば実に他愛無いものなので、ストレスなく楽しくプレイできる。しかしなんといってもこのゲームの魅力はシーソーであり、中心メカニクスが他のものだったなら誰も見向きもしなかったろう。身体的快楽を熟知したデザイナーによって、石の手触りもシーソーの材質も吟味された結果、乗せた瞬間にカクッと傾きを変えることを望みつつ石を置く感覚は、見事な身体的快楽に、そしてまた観る快楽にも昇華している。

言ってみれば「変なコンポーネント」のゲームの1つに過ぎない。そして私は「変なコンポーネント」大好き人種なので、いろいろと理屈をこねくり回して実態以上の価値を見出そうとしているだけなのかも知れない。だが「変であること」の喜びはなにかと言えば、多くは身体的快楽に着地するのではなかろうか。そして身体的快楽の導入には、ただ「変」であれば良いわけではないのは当然だ。この点で、できの良いイロモノは、実はすこぶるまっとうなものであるとも言える。