2012年11月3日土曜日

アレなゲームの会(テンタクルベントー、ブックメーカー)

ボードゲームブロガーの雄にして国内有数の小箱ゲーマーであるオビ湾卿が、ほぼ毎週開催しているゲーム会、それが「ビッグバントーナメント」である。審美眼の肥えたひとびとが古今東西のハイセンスなゲームを持ち寄る、ボードゲーム版数奇者寄合と言えよう。しかし参加者の一部には悪いもののとりすぎでジャンキーと化した者もいて、「これいいでしょう」などと言いつつアレなゲームを持ってくる。果ては「どんなゲームでも持って行って良い会」などと自分勝手な解釈をし、アレどころかゲテなゲームを持ってくる。こうなれば数奇を嗜む風流さなどどこぞに吹き飛び、昭和40年代のブルーフィルム上映会のような怪しげな熱気が支配する場となりそうであるが、しかし主催者オビ湾卿の鷹揚な大陸大人的風格が、この会を清涼なものに保っているのだ。


エントリー群。アレもありゲテもあり。


テンタクルベントー(Tentacle Bento


女の子の名前は変なのが多い。

アニメ調フィギュア屋、Soda Popの新作Hentaiカードゲーム。プレイヤーの目的は「タコ足大学に忍び込んだ触手エイリアンになって、たくさんの女の子を捕まえる」こと。当初はKickstarterで資金を募っていたがあまりの下品さで追い出され、自サイトでの資金募集に切り替えた。そこまでは追っていたのだがあとはとんと噂を聞かず、空中分解したのかと思っていたら驚くことにエッセン2012に出展していた。それもたんとくおーれを擁するJapanime Gamesの隣りブースである。あちらは大人気だったが、こちらは対象年齢16歳以上ということもあってか(たぶん関係ない)、閑古鳥が鳴いていた。しかし買うべきは当然こちらだろう。

こういう絵を味わうことが主目的なゲームの場合、システムは既存のしっかりしたものから借りてきてくれる方がありがたい。へんにこねくり回されるとろくなことにならないからだ。その点たんとくおーれはうまかったんじゃないか(やったことないけど)。このゲームの基本はラミーなので、数百年の歴史が培った安定感がある。デックビルドなんて目じゃないのだ。

スートは4つ。ランクはないがスートごとに3種のカードがある。場所、シチュエーション、女の子だ。これを組み合わせて「どこで」「どんなシチュエーションで」「どの娘を」触手でつかまえましたーと出せばメルドになる。メルドのスートが同一である必要はないが、同一だとボーナス効果があったり、女の子を3枚まで同メルドに出すことができる。

紫スート2女子メルド。

付け札もできるし、捨札の下の方からカードをドローすることもできる。この場合、ドローしたカードの上に捨てられているカードがすべて手札となるが、ドローカードはただちにメルドしなければならない(メルドできないようなカードはとれない)。これは500ラミーである。ちょっと感動した。

で、ここでやめておけばそこそこ遊べるゲームだったと思うのだが、おろかにも余計なことにセットコレクションが加わっている。ゲーム終了時にメルドした娘が多いほうが勝ちというわけだ。ゲームがいつ終わるかといえば、山札から4枚のイベントカードがひかれたとき、である。

ラミーは早あがりのゲームである。手札を早くなくした方が勝ちだ。これに対してセットコレクションは手札を貯めるゲームだ。こういうのを水と油という。ふつうのラミーのつもりで手札をすべてメルドしてしまうと、あがりになるどころか、ただドローして捨てるだけの苦行時間が始まる。いちおう捨て山から複数枚拾ってただちにメルドできれば復活できるが、かなり厳しい。そこまで考えてカードマネジメントするゲームなんだよと言われればまあそうかも知れないが、知れないが……。




ブックメーカー(Bookmaker




タナカマ店長が箱のオッサン絵だけで購入した競馬ゲーム。
プレイヤーは胴元と客にわかれ、胴元はオッズを設定し、客がそれに賭ける。レースごとに胴元が交代していって、最後に一番金持ちのプレイヤーが勝ち。

ベッティングフェイズ途中のオッズ変更などいろいろあることはあるが、はっきり言って破綻している。やろうとしていることはわかるのだが、その域までいくのに100段階くらい足りない。情報の非対称性を軸にしているのに、客プレイヤーが確認できるのが全80枚中4枚、胴元が6枚で、2枚差しかない。こんなのカスみたいな誤差である。しかもラウンド中に情報が増えていくわけではない。もう超能力者でもない限り確率に頼るしかなかろう。

コンポーネントは悪くないので、これ使って別のゲーム作ればいいと思う。

ところがつまらなくはなく、それどころか始終げらげら笑いの絶えない、実に楽しいセッションだった。なんせプレイヤーの半数以上が破産したのだから。でも2回目はないね。

2012年11月2日金曜日

メイジウォーズ入門

メイジウォーズ(Mage Wars




Arcane Wondersなるパブリッシャーが今年のGenConで出したゲーム、というかこれしか出してない。出回りだしたのはエッセン直前で、渡航前にやっておきたかったのだが機会がとれなかった。

基本的には2人用ゲームで、プレイヤーは魔術師になってモンスターを召喚したり攻撃魔法や補助魔法を駆使したりなんなりして、とにかく殺し合う。最初に数百枚のカードから個人デックを構築するのだが(もちろんデフォルトカードリストもある)、そこから何枚かドローするのではなく、全部手札にする。1人のカード数=呪文数が何十にも及ぶため普通に手札として持つのは困難。そこで専用のカードアルバムが用意されている。まさに呪文書、気分は魔術師だ。……ばかですねえ。こういうのが大好きなBGGではかなりの高評価を受けているが、ファンタジーものの高評価には要注意なのだ。Defenders of the Realmを忘れるな、である(好きなひとごめんなさい)。でも買ったけど。そんなんばかり買ってる気もするけど。あ、そんなゲームにいつも付き合ってくれる皆さん、ありがとうございます。いやほんとうに。

こういうゲームは自分で呪文書を構築できるようになってからが本当に楽しくなるものなんだろうが、そこまでできるようになるまでが往々にして苦難の道だ。しかもこの手のゲームって普通はプレイ時間30分かそこらだと思うのだけど(Summoner Warsとか)、これは公称90分、BGGフォーラムでは初回は2時間以上みたほうがいいとか書いてある。ちょっと萎えていたらインスト用の入門ルールを見つけた。ルールはフルゲームと同一だが、初期体力とマナ、持ち呪文を少なくしてあり、しかも難しい効果の呪文は外してある。せっかくなので今日は入門会という位置づけとし、こちらをやることにした。つまらなかったら入門即破門だけどね。


まずはスケルトンを召喚。

ラウンドの始めにマイ呪文書から呪文を2枚選択し、裏向きに置く。これが今ラウンドで使用可能な呪文となる。そうしたら交互に1アクションずつ行なっていく。1クリーチャーを行動させることが1アクションなので、モンスターを召喚すればするほど手番が増える。そのぶんマナは減るが。魔術師自身もクリーチャーに含むが、こいつはさすがに主役なので、メイン魔法とクイック魔法の2呪文を放つことができる。だから最初に2枚をプロットするというわけ。

召喚したモンスターは、召喚呪文カードがそのままコマがわりとなってボードに配置される。魔術師もカードで、ゲームの最初からボードに置かれている。エンチャント呪文なんかもすべてボードに置かれるので、ボードの1マスはとても広い。なのでマス数はそれほど多くはない(3×4)のだけれど、ボードはとてもでかい。

呪文数はフルゲームの半分以下になったので20枚ほど。これならなんとか手で持てる。カードには消費マナや呪文種別(召喚とかエンチャントとか。装備もルール上は呪文として扱う)なんかが示されていて、ここはわかりやすい。カードテキストもけっこうあるけど、そんなに長い文章じゃないのでまあわかりやすい。問題は特殊用語で、たとえば"Burn"と書かれていたら、その効果内容はカードのどこにも書かれてはおらず、ルールブック巻末の用語集を確認するしかないのだ。そして、その特殊用語の数は100は下らない。最初のうちはカードを選んだり公開したり発動したりするたびにルールブックをぺらぺらすることになる。両プレイヤーともにルールブックを持っていることが、快適なプレイのための必須条件だ。

ところが、用語確認が滅茶苦茶めんどくさいんだろうな、と予想していたのだけれど、意外とそうでもなかったのだ。1度確認すればほぼ忘れない、簡単なものが多かったおかげである。某まげないとBGのように何度確認しても忘れてしまうのとは大違い。

入門ルールの変更点はもう1つ、マップが小さいことで、半分になる。敵陣は目の前なので、「まずは陣営をくんで右翼にうんたらを召喚し……」などとやっている暇はなく、俺についてこいとばかりに2、3匹のモンスターを引き連れて突っ込んでいく。わたしの担当キャラクターのWarlockが戦闘特化キャラだったこともあるのだが。とにかくわけわからずにひたすら敵将の首を狙って攻撃しまくってたらいつのまにか相手はミンチとなっていた。所要時間60分。


モンスターカードの下にあるのがエンチャント。右のは攻撃ダイスが2個増える、なかなかの強力エンチャント。


初回は単純なノーガードの殴り合いだったが、それでもなかなか楽しいじゃないかということで、すぐさま2戦目。今回は相手のWizardが自分に補助エンチャントをいろいろと貼り付けて守りを固め(これのおかげで3回ほど攻撃呪文を無効化された)、1アクションで3回攻撃できる凶悪モンスターをこちらの本陣にテレポートさせてきて、哀れたこ殴りにされ死亡。うん、入門ルール段階でもけっこうな戦術性もあるし、エンチャントのブラフ要素(こういうカードは裏向きに配置し、任意のタイミングで公開発動できるのだ)も面白いし、マナリソース管理も悩ましい(とうぜん凶悪な呪文は高いマナコストがかかる。マナはラウンド毎に一定量供給されるので、強力呪文を使いたければしゃがんで耐えなければならない)。

これがフルルールになれば、呪文をつかえるモンスターを召喚したり罠をはったりなどやれることが増えるし、マップが広くなるので手組が必要になり、より戦術性が増すことだろう。時間も2時間もあれば余裕で終わりそうだ。いやあ、やはりBGGの評価は信じるべきです。

というわけで再戦を約してこの日はお開き。はやくフルゲームがやりたい。それが面白かったらメイジウォーズ仲間を増やして、拡張が出たらそれも買って、たくさん遊ぶのだ(そういうことを去年YOMIでも言っていたような気がするが、結局YOMIは5回くらいしかやっていない)。