ボードゲームの魅力のひとつは、ゲームの内容物を実際に手で触れられることだろう。コマをつまんで動かす、カードを揃えて出す、そしてもちろんダイスを振る身体的感覚は、他では味わえない快楽と言える。作り手もこのことは当然承知していて、身体的快楽を前面に押し出したゲームが、ときおり出る。
Zoch Verlagの創始者Klaus Zochは、ボードゲームの身体性を十全に使いこなすデザイナーのひとりだろう。視覚的・触覚的快楽の融合の極致と言えるバウザック、聴覚をゲームに取り入れたザップゼラップやイグルーポップ等、ものに触れること、それ自体が楽しいことに気づかせてくれる。
そのZochが2007年(たぶん)に創立したスモールパブリッシャーがChili Spieleだ。なぜZoch Verlagがあるのに別会社をつくったのか? 生産が困難なことや、予測される利益が薄すぎることなどから、大手パブリッシャーが作りたがらないゲームを世に出すために、と説明されている。このためコスト削減策として小売を通さず、ウェブサイトを通じた直販でのみ販売を行っている。
現在までに彼らが出してきたゲームは6つある。どれも創立理念に沿った、コンポーネントに凝ったゲームだ。この「凝った」の意味は当然、FFG的方向とは正反対の、触れる快楽を見据えた質実な木製の凝り方である。私はFFGのゲームが大好きだ、念のため。
2番目の作品であるDie Aufsteigerは、The Climbersと改題されてアメリカでも出され、そこから日本にも入ってきたので、プレイされた方もいるだろう。ルール的には特筆することはない積み木レースなのだが、しかし積み木の楽しさを十分に生かした佳作だった。
前置きが長かったが、今回紹介するゲームはここの5作目にあたる2010年発売のHinkel & Stein。作者は当然Klaus Zochである。
この作品は一言で説明可能だし、もっと簡単なのはコンポーネント写真を見てもらうことだ。そう、シーソーだ。シーソーに石を乗っけるゲームである。
4人のプレイヤーたちは各々5個1セットの石を持つ。セットごとに石の種類が異なり、色や形も様々だ。他のコンポーネントはシーソーと、勝利点となるチップだ。このチップがまた木製のおおぶりなディスクで、なんとも良いのである。
ゲームは1ディール(ということばを使おう)が5ラウンドで構成される。プレイヤーは毎ラウンドに手持ちの石を1つ使うので、手石は使いきりだ。ラウンド開始時、まずストックからプール(ポーカーで言うポット)にチップが2枚追加される。次に親が今ラウンドの勝利条件を選択する。「重いほうが勝ち」か「軽いほうが勝ち」かだ。そうしたら親はスタートプレイヤーを指定する(自分でも良い)。指定されたプレイヤーは、「行く」と決めたらプールにストックからチップを2枚追加する。もしくは「降りる」と決めたらストックからチップを1枚もらう。どちらの場合でも、自分の石を1つ、シーソーに乗せなければならない。石を乗せるマスは各端に2ヶ所、計4ヶ所ある。
スタートプレイヤーが行くか降りるかして石を置いたら、親は次の手番プレイヤーを指定する(もちろん自分でも良い)。こうして全員が行くか降りるかし、石を乗せ終わったら勝敗判定となる。ラウンド開始時に決定された勝利条件に従って勝者2人が決まり、プールのチップを山分けする。ただし勝者のうち1人が降りていたら、もう1人がプールを独占することになる。どちらも降りていたら、そのプールは次ラウンドまで持ちこしだ。
さて、これだけだとさすがに単純にもほどがあるので、各石セットには特殊能力が加わっている。基本はディールにつき1回だけ発動でき、シーソーの支点をずらしたり、小石を追加で置けたりする。強力なのがプールに2枚ではなく4枚追加できる能力を持つクォーツ石で、親はこのプレイヤーと協力して山分けを狙うのが基本戦術となる。
こうして5ラウンドが終了したら、各プレイヤーは自分の石セットをすべて左隣プレイヤーへとまわす。そうして4ディール、つまり全員が全石種をプレイしたらゲーム終了で、最もチップ数の多いプレイヤーの勝利となる。
将来の重勝ち戦のためにこれは温存しておいて……などと吝嗇心を出して討ち死にしたり、協力するふりをしながら裏切ったり、意外とドラマが起こる。だがそんなドラマも言ってみれば実に他愛無いものなので、ストレスなく楽しくプレイできる。しかしなんといってもこのゲームの魅力はシーソーであり、中心メカニクスが他のものだったなら誰も見向きもしなかったろう。身体的快楽を熟知したデザイナーによって、石の手触りもシーソーの材質も吟味された結果、乗せた瞬間にカクッと傾きを変えることを望みつつ石を置く感覚は、見事な身体的快楽に、そしてまた観る快楽にも昇華している。
言ってみれば「変なコンポーネント」のゲームの1つに過ぎない。そして私は「変なコンポーネント」大好き人種なので、いろいろと理屈をこねくり回して実態以上の価値を見出そうとしているだけなのかも知れない。だが「変であること」の喜びはなにかと言えば、多くは身体的快楽に着地するのではなかろうか。そして身体的快楽の導入には、ただ「変」であれば良いわけではないのは当然だ。この点で、できの良いイロモノは、実はすこぶるまっとうなものであるとも言える。
2013年4月2日火曜日
2013年3月31日日曜日
エクリプス拡張:古代種族の夜明け(エクリプス9人会)
今は昔、と始めたくなるほどに時が経ってしまったし、参加者レポートもすでに何件か出ていて屋上屋を架すを地で行っているような気もするけれど。
3月某日、拡張が出てマックス9人プレイ可能となったエクリプスを、どうせなら9人でやろうじゃないか会が開かれた。プレイ結果は他で書かれているので、この拡張自体の感想めいたことを書いておく。私のエクリプス経験は無印を7回で、人類+全種族経験済み。ただし拡張は今回の1回のみだ。
プレイレポートは同卓者の皆様のこちらをどうぞ。
お祭り(Eclipse 9人戦) - pmnjの日記
【プレイ日記】9人エクリプス会&ビッグバントーナメント第四十一夜 - 今日もプレイミス - 楽天ブログ(Blog)
第34回「一大宇宙叙事詩『エクリプス』で9人戦!」: タナカマコトの「手番ですよ。」
この拡張は何種類もの拡張の詰め合わせで、それを自由に組み合わせてゲームに取り入れられる。今回はせっかくの機会なので、入れられるだけ突っ込んだ。
総じてバランスを壊すことなく(むしろ改善する方向)、煩雑さもほとんど増さないので、ぜひ入れるべき拡張だ。
入れれば戦術の多様性は間違いなく増すし、めんどくさくなるわけでもないので、レア技術ほどではないけれど、これもお勧め。
エクリプスで最も運要素が強いのが探索タイルめくりだが、それをより強くしている。この拡張セットのなかで、これだけは余りお勧めできない。
レア技術と並ぶこの拡張の目玉だろう。前述のようにエクリプスは移動の自由度が小さい(他人の領域に入った時点で宣戦布告となる)のだが、このルールのおかげで移動範囲がぐっと広がる。もちろん戦術の幅も広がり、戦闘型の種族が守りを固め、その後方で建造有利種族がモノリスを建てまくる、といったことも可能となる。最終ターン以外なら同盟を抜ける(ペナルティ3点)こともでき、仲間だからといって完全に信頼して良いわけではない。モノリス警護を任せ、自領域内に船をたくさん入れさせていたら、裏切りによってすべて奪われてしまった、なんてことも起こりうるのだ。
BGGではエクリプスをユーロゲームとするひとが多い。これはさすがにどうかと思うのだが、4x系マルチの系譜から見れば、相当にユーロ寄りなハイブリッドであることも明らかだ。なんといっても、原理的には他プレイヤーと戦闘をしなくても勝てるのである。しかし日本ではむしろ重量級ゲームとして受け取られ、「なのにマルチとして物足りない」という風に見る向きもある。実は私も結構それに近い感想を持っている。スマートと評される部分に、丈の足りなさを感じてしまう。
この拡張、というよりも同盟拡張によって、エクリプスのマルチ性は大幅に増した。「叩くべき相手」に攻撃が届く可能性が増し、誰と同盟を組むのか、組むとして裏切るのか、裏切るのならいつ裏切るのかなど、政治的判断を要する機会が多くなっている。しかもメカニクスの「スマートさ」はそのままだ。バニラのエクリプスを気に入らなかった人にこそ、試してもらいたい。
と言っても私が次にエクリプスをやるのは、多分来年、新しい拡張が出たら(アナウンスもなにも無いが、出る予感がびんびんである)ということになりそうだ。世の中面白いゲームはたくさんあるのですものね。
3月某日、拡張が出てマックス9人プレイ可能となったエクリプスを、どうせなら9人でやろうじゃないか会が開かれた。プレイ結果は他で書かれているので、この拡張自体の感想めいたことを書いておく。私のエクリプス経験は無印を7回で、人類+全種族経験済み。ただし拡張は今回の1回のみだ。
プレイレポートは同卓者の皆様のこちらをどうぞ。
お祭り(Eclipse 9人戦) - pmnjの日記
【プレイ日記】9人エクリプス会&ビッグバントーナメント第四十一夜 - 今日もプレイミス - 楽天ブログ(Blog)
第34回「一大宇宙叙事詩『エクリプス』で9人戦!」: タナカマコトの「手番ですよ。」
この拡張は何種類もの拡張の詰め合わせで、それを自由に組み合わせてゲームに取り入れられる。今回はせっかくの機会なので、入れられるだけ突っ込んだ。
- レア技術
総じてバランスを壊すことなく(むしろ改善する方向)、煩雑さもほとんど増さないので、ぜひ入れるべき拡張だ。
- 進歩
入れれば戦術の多様性は間違いなく増すし、めんどくさくなるわけでもないので、レア技術ほどではないけれど、これもお勧め。
- 古代人の故郷
- 銀河中枢の奪取
- 古代人の群れ
エクリプスで最も運要素が強いのが探索タイルめくりだが、それをより強くしている。この拡張セットのなかで、これだけは余りお勧めできない。
- ワープポータル
- 2人同時プレイ
- 同盟
レア技術と並ぶこの拡張の目玉だろう。前述のようにエクリプスは移動の自由度が小さい(他人の領域に入った時点で宣戦布告となる)のだが、このルールのおかげで移動範囲がぐっと広がる。もちろん戦術の幅も広がり、戦闘型の種族が守りを固め、その後方で建造有利種族がモノリスを建てまくる、といったことも可能となる。最終ターン以外なら同盟を抜ける(ペナルティ3点)こともでき、仲間だからといって完全に信頼して良いわけではない。モノリス警護を任せ、自領域内に船をたくさん入れさせていたら、裏切りによってすべて奪われてしまった、なんてことも起こりうるのだ。
BGGではエクリプスをユーロゲームとするひとが多い。これはさすがにどうかと思うのだが、4x系マルチの系譜から見れば、相当にユーロ寄りなハイブリッドであることも明らかだ。なんといっても、原理的には他プレイヤーと戦闘をしなくても勝てるのである。しかし日本ではむしろ重量級ゲームとして受け取られ、「なのにマルチとして物足りない」という風に見る向きもある。実は私も結構それに近い感想を持っている。スマートと評される部分に、丈の足りなさを感じてしまう。
この拡張、というよりも同盟拡張によって、エクリプスのマルチ性は大幅に増した。「叩くべき相手」に攻撃が届く可能性が増し、誰と同盟を組むのか、組むとして裏切るのか、裏切るのならいつ裏切るのかなど、政治的判断を要する機会が多くなっている。しかもメカニクスの「スマートさ」はそのままだ。バニラのエクリプスを気に入らなかった人にこそ、試してもらいたい。
と言っても私が次にエクリプスをやるのは、多分来年、新しい拡張が出たら(アナウンスもなにも無いが、出る予感がびんびんである)ということになりそうだ。世の中面白いゲームはたくさんあるのですものね。
2013年2月28日木曜日
Gladiatori会
ふうかさん、かろくさんと。いつも様々なゲームをプレイできるので、実にありがたいのです。
イタリア・ロシアゲーム会で私の準備が間に合わなかったので次回まわしとなった作品。イタリアはGiochix.itの2012年新作で、デザイナーはRio de la PlataやThe Forgotten PlanetのMichele Quondam。
題名のとおりプレイヤーは剣闘士となって殺しあうのだが、自分のキャラクター能力はカードデッキからなっており、手番でカードをプレイしてボード上のフィギュアを行動させるというちょっとアメゲーぽいシステムを採用している。キャラがデッキということは当然プレイ前のデッキ構築要素があるわけで、これもまたアメリカ的だ。もともとこのデザイナーはOne More Barrelに端的に見られるようにいわゆるハイブリッド的な特徴を持っていたのだが、ここんとこユーロに舵をきっていた印象があった。それがまた逆方向にきられたようだ。
キャラ別デッキを持って戦うとなると特殊能力ばりばりの必殺技の応酬を予感させるが、1戦やってみた感じはもっと地味で繊細で、勝利点をこつこつと積み重ねていく感じだ。明らかにアメゲー文脈の系譜に連なるものでありながら、プレイ感はそのステレオタイプから乖離している。ヌーヴェルヴァーグがアメリカB級映画の影響を受けながらも、その文法摂取においてズレが生じたことにより新たな映像が生み出されたように、というのは言い過ぎだろうが、恐らく魅力的なゲームはこうしたズレが顕著な場所から出てくるのだろうし、だからこそドイツでもアメリカでもないイタリアやロシアやポルトガルやフィンランドが「面白い」のだろう。もちろんゲーム自体の完成度は別であり、あくまで可能性の話にとどまるけれども。しかし魅力とは可能性のことなのだ。
怪しげな能書きはこのへんにしてゲーム内容に移ろう。前述のとおり各キャラはカードデッキで構成される。ターン最初にプレイヤーたちは自分のキャラデッキから任意枚数を選択し手札とする。残ったデッキは山札として置いておくのだが、戦闘で自キャラがダメージを受けた場合、この山札から受けたダメージに相当するカードを除外しなければならない。山札が尽きれば当然死亡=敗北である。大量のカードを手札にすれば戦闘力は強くなるがダメージには脆弱となってしまうわけで、この基本メカニクスを聞くだけでなんか面白そうだと思えるんじゃないだろうか。私は結構わくわくした。
カード内容の説明等は煩瑣になるので避けるが、基本は4種類あるアクションカードから1枚をプレイしてアクションを行う、また攻撃されたときもアクションカードを1枚プレイしてリアクションを行う。どちらの場合も追加カードを任意枚数出すことが可能で、これによって攻撃力/防御力を高めたり、特殊能力を発動させたりする。そしてプレイは基本的に裏向きであり、カード相性などもあるので読み合い要素が強い。
カードにテキストはなくアイコンだけだが、アイコンの意味はルールを見ないと全くわからない。また、とるアクションによって攻撃力増幅の方法が異なったり、あるアクションでは回復不可だが別のアクションでは回復可能なステータスがあったり(これだけなら普通だが、とにかく解り難いのだ)、口頭インストだけでは記憶不可能なのでサマリー必須だ。逆を言えばサマリーさえあればなんとかなるとも言えるのだけど。どうも変に複雑で、その複雑さがゲームのなにに貢献しているのかが解りづらいため、デベロップ不足なのではないかと言いたくもなるのだが、前提としてやり込みゲームであるのは明らかなので、何度もこなせばまた違ったものが見えてくるのかも知れない。
ゲームは6ターンで終わり、勝利点勝負になる。もしくは自分以外の全員を殺せばそこで勝ちだ。勝利点は「攻撃すること」自体で得られ、その攻撃でダメージを与えればその分の勝利点ももらえる。特徴的なのが「誇り高い戦闘」がテーマとなっていることで、後ろから攻撃したり敵から逃げたりなどすると勝利点がひかれてしまう。後ろから攻撃すればダメージが通りやすくなるので、これは当然「卑怯者プレイで6ラウンド以内にぶっ殺す」か「正統派プレイで生き残り、勝利点で勝つ」かの2択ゲームではないかと思ったのだが、卑怯技を駆使しても1人も殺せなかった。正統派の削り合いを地味に繰り返しながら、勝利点レースを行うのが主眼なのだろう。
繰り返すがこれは「やり込み」を前提としているゲームだし、最も機能するのは2陣営戦だろうので、どうにも価値的なことは言いづらいのだが、第一印象を率直に述べれば、BGGの評価コメントのことばを借りて、"Good Concept, Bad Mechanic"と言わざるを得ない。だが一番の問題は、このマニアックと言えるゲームをやり込むようなプレイグループが日本のどこに存在するのかという、極めてエージェンシャルな問題だろう。
基本はハイパーロボット。だがロボットならぬミープルに「1歩斜め移動できる」とか「2マスジャンプできる」だとかの特殊能力を加えている。おまけに勝利点を重ねるごとに使えるミープルが減っていくという仕様のおかげで、上級者と初級者とが同時にパーティゲーム的に楽しめる作品となっている。私のようなハイパーロボット嫌いのひとにこそおすすめできるが、つまりは負けていたらハイパーリーチ棒や牌交換が得られる麻雀のようなものなので、ガチなひとは避けたほうがよろしいかも。
スウェーデンのFryxGamesのエッセン2011作品。これはコンポーネントを改良したエッセン2012発売の第2版。
5色のカードを自分の場に並べて宇宙基地をつくっていく。もちろんカードには特殊能力があり、建設(プレイ)費を安くしたり、ワーカーを生産したり、ワーカーを置くことでなにごとかが行えたりする。使い捨てのイベントカードもあり、これは攻撃色が強い。各ラウンド終了時、各色プレイ枚数で1位のプレイヤーに勝利点が与えられる。
というわけで結構よくあるタイプのゲームではあるのだが、コンパクトにまとまっていてサクっと終わるので、楽しいものに仕上がっている。直接攻撃が多くマルチ要素が強いところは好みが分かれるだろうが、私はこの日一番気に入った。あれだ、ドゥーム向きだ、これは。
添付の日本語訳には誤訳があり、「勝利点は各色1位がその枚数分」ではなく「各色1位に1点ずつ、最終ラウンドのみ2点ずつ」なのでご注意。
絵がかわいい協力ゲームである。難度はかなり低めで、初回でクリアできた。……他に書くことが思い浮かばない。
なんか今回の感想はネガティブ寄りな気がするが、プレイ中はどれも実に楽しかったのだ。ゲームは面子というのは「それを言っちゃあおしめえよ」なのだが、しかしやはり真実なのだよなあ。またよろしくお願いします。
剣闘士(Gladiatori)
イタリア・ロシアゲーム会で私の準備が間に合わなかったので次回まわしとなった作品。イタリアはGiochix.itの2012年新作で、デザイナーはRio de la PlataやThe Forgotten PlanetのMichele Quondam。
題名のとおりプレイヤーは剣闘士となって殺しあうのだが、自分のキャラクター能力はカードデッキからなっており、手番でカードをプレイしてボード上のフィギュアを行動させるというちょっとアメゲーぽいシステムを採用している。キャラがデッキということは当然プレイ前のデッキ構築要素があるわけで、これもまたアメリカ的だ。もともとこのデザイナーはOne More Barrelに端的に見られるようにいわゆるハイブリッド的な特徴を持っていたのだが、ここんとこユーロに舵をきっていた印象があった。それがまた逆方向にきられたようだ。
キャラ別デッキを持って戦うとなると特殊能力ばりばりの必殺技の応酬を予感させるが、1戦やってみた感じはもっと地味で繊細で、勝利点をこつこつと積み重ねていく感じだ。明らかにアメゲー文脈の系譜に連なるものでありながら、プレイ感はそのステレオタイプから乖離している。ヌーヴェルヴァーグがアメリカB級映画の影響を受けながらも、その文法摂取においてズレが生じたことにより新たな映像が生み出されたように、というのは言い過ぎだろうが、恐らく魅力的なゲームはこうしたズレが顕著な場所から出てくるのだろうし、だからこそドイツでもアメリカでもないイタリアやロシアやポルトガルやフィンランドが「面白い」のだろう。もちろんゲーム自体の完成度は別であり、あくまで可能性の話にとどまるけれども。しかし魅力とは可能性のことなのだ。
怪しげな能書きはこのへんにしてゲーム内容に移ろう。前述のとおり各キャラはカードデッキで構成される。ターン最初にプレイヤーたちは自分のキャラデッキから任意枚数を選択し手札とする。残ったデッキは山札として置いておくのだが、戦闘で自キャラがダメージを受けた場合、この山札から受けたダメージに相当するカードを除外しなければならない。山札が尽きれば当然死亡=敗北である。大量のカードを手札にすれば戦闘力は強くなるがダメージには脆弱となってしまうわけで、この基本メカニクスを聞くだけでなんか面白そうだと思えるんじゃないだろうか。私は結構わくわくした。
カード内容の説明等は煩瑣になるので避けるが、基本は4種類あるアクションカードから1枚をプレイしてアクションを行う、また攻撃されたときもアクションカードを1枚プレイしてリアクションを行う。どちらの場合も追加カードを任意枚数出すことが可能で、これによって攻撃力/防御力を高めたり、特殊能力を発動させたりする。そしてプレイは基本的に裏向きであり、カード相性などもあるので読み合い要素が強い。
カードにテキストはなくアイコンだけだが、アイコンの意味はルールを見ないと全くわからない。また、とるアクションによって攻撃力増幅の方法が異なったり、あるアクションでは回復不可だが別のアクションでは回復可能なステータスがあったり(これだけなら普通だが、とにかく解り難いのだ)、口頭インストだけでは記憶不可能なのでサマリー必須だ。逆を言えばサマリーさえあればなんとかなるとも言えるのだけど。どうも変に複雑で、その複雑さがゲームのなにに貢献しているのかが解りづらいため、デベロップ不足なのではないかと言いたくもなるのだが、前提としてやり込みゲームであるのは明らかなので、何度もこなせばまた違ったものが見えてくるのかも知れない。
ゲームは6ターンで終わり、勝利点勝負になる。もしくは自分以外の全員を殺せばそこで勝ちだ。勝利点は「攻撃すること」自体で得られ、その攻撃でダメージを与えればその分の勝利点ももらえる。特徴的なのが「誇り高い戦闘」がテーマとなっていることで、後ろから攻撃したり敵から逃げたりなどすると勝利点がひかれてしまう。後ろから攻撃すればダメージが通りやすくなるので、これは当然「卑怯者プレイで6ラウンド以内にぶっ殺す」か「正統派プレイで生き残り、勝利点で勝つ」かの2択ゲームではないかと思ったのだが、卑怯技を駆使しても1人も殺せなかった。正統派の削り合いを地味に繰り返しながら、勝利点レースを行うのが主眼なのだろう。
繰り返すがこれは「やり込み」を前提としているゲームだし、最も機能するのは2陣営戦だろうので、どうにも価値的なことは言いづらいのだが、第一印象を率直に述べれば、BGGの評価コメントのことばを借りて、"Good Concept, Bad Mechanic"と言わざるを得ない。だが一番の問題は、このマニアックと言えるゲームをやり込むようなプレイグループが日本のどこに存在するのかという、極めてエージェンシャルな問題だろう。
ミュータント・ミープルズ(Mutant Meeples)
基本はハイパーロボット。だがロボットならぬミープルに「1歩斜め移動できる」とか「2マスジャンプできる」だとかの特殊能力を加えている。おまけに勝利点を重ねるごとに使えるミープルが減っていくという仕様のおかげで、上級者と初級者とが同時にパーティゲーム的に楽しめる作品となっている。私のようなハイパーロボット嫌いのひとにこそおすすめできるが、つまりは負けていたらハイパーリーチ棒や牌交換が得られる麻雀のようなものなので、ガチなひとは避けたほうがよろしいかも。
スペース・ステーション(Space Station)
スウェーデンのFryxGamesのエッセン2011作品。これはコンポーネントを改良したエッセン2012発売の第2版。
5色のカードを自分の場に並べて宇宙基地をつくっていく。もちろんカードには特殊能力があり、建設(プレイ)費を安くしたり、ワーカーを生産したり、ワーカーを置くことでなにごとかが行えたりする。使い捨てのイベントカードもあり、これは攻撃色が強い。各ラウンド終了時、各色プレイ枚数で1位のプレイヤーに勝利点が与えられる。
というわけで結構よくあるタイプのゲームではあるのだが、コンパクトにまとまっていてサクっと終わるので、楽しいものに仕上がっている。直接攻撃が多くマルチ要素が強いところは好みが分かれるだろうが、私はこの日一番気に入った。あれだ、ドゥーム向きだ、これは。
添付の日本語訳には誤訳があり、「勝利点は各色1位がその枚数分」ではなく「各色1位に1点ずつ、最終ラウンドのみ2点ずつ」なのでご注意。
参った、侵略だ!(Oh no...Invasion!!!)
なんか今回の感想はネガティブ寄りな気がするが、プレイ中はどれも実に楽しかったのだ。ゲームは面子というのは「それを言っちゃあおしめえよ」なのだが、しかしやはり真実なのだよなあ。またよろしくお願いします。
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