2012年9月29日土曜日

アンデアン・アビス会

前々日に「4人集まるならアビスがやりてえです」と言ったらすんなり通り、ルール訳者の旅団長閣下にはいろいろお手数をおかけした。ありがたいこってす。

旅団長、つなきさん、ナガミネさんと。

アンデアン・アビス(アンデスの奈落)(Andean Abyss


GMTのCOINシリーズ第1弾で、デザイナーはLabyrinthのVolko Ruhnke。国家としての体が崩れかかっていた90年代コロンビアが舞台で、プレイヤーはそれぞれ政府、極左組織、極右組織、麻薬組織を担当し、相異なるアクションを駆使して相異なる勝利条件を目指す。内容は実にブラックで、テロ脅迫誘拐なんでもござれ、もちろん麻薬を作って売り払うこともできる。

いわゆるカードドリブンのマルチゲームなのだがカードの使い方に特徴があり、手札というものがない。毎ラウンドデックのトップカード1枚がプレイされ、そのカードに示された手番順でプレイヤーはカードイベントかアクションを行う。しかしこれを行えるのは2人までで、しかもこのラウンドでアクションすると次ラウンドは参加できなくなってしまう。次ラウンドでプレイされるカードはわかっているので、今回は手番順が先でもあえてパスし、効果が大きい次ラウンドのカードイベントを狙う、もしくは次ラウンドイベントの損害が大きすぎるので今回はパスをして……等々といったジレンマが主軸だ。

1ラウンドで2人までとはいっても、1人目がイベントを発動させると2人目はアクションしかできないし、また1人目がスペシャル抜きのアクションを選択すると、2人目はしょぼアクションしかできなくなってしまう。相手が何を選択するのかを予測していかなければならないわけだ。といってもカードは常に2枚しか見えていないし全体公開なので、他ゲームでよくあるように手札の吟味やカード効果確認で時間をとられることがほとんどない。感覚的にはスムーズだ。

ユニオンパシフィックのように決算カードがデックに計4枚入っており、これがプレイされると勝利判定その他の決算ラウンドが行われる。つまり直前にならなければ決算がいつ始まるかがわからないので、常に好位置をキープしておく必要があり、勝利条件的にも均衡状態が続く(誰かの勝利条件クリアが他の誰かを悲惨な地位におとしめることが無いので)。


で、今回は黄色の極右組織を担当したのだが、こいつが金がないわ人員はいないわの絵に描いたような貧乏右翼で、おまけに勝利条件が「極左組織よりも多くの基地を持つ」という完全な他者依存であり、なんとも実に辛かった。極左の主要敵は政府なので、こちらは政府におもねって「アカの基地つぶしますからお金ください」などとへらへらしつつ、しかも極左を本気にさせたら叩き潰されるので、「まあなあなあで行きましょうや」とコウモリをしなければならない。

セットアップ含め4時間かかったが終了まではいかなかった。でも大体感覚はつかめたので、次回に期待。


スクラムブロウル(Scrumbrawl


ここで旅団長ご帰還。疲労で頭がぽえぽえしてたので、最近のバカアメゲーでは屈指の作であるこいつを投入。

モンスターを召喚してCTFというかラグビーというか的なことをやらせるゲーム。ボールをポータルに入れるか、敵モンスターを3匹殺すと1点。3点先取で勝利。

いままで2人でしかやったことがなかったのだが、3人でやると5倍くらい面白くなる。とにかくモンスター能力や特殊効果がはちゃめちゃで本当に楽しい。惜しむらくはボードが地味なことと、カードテキスト文字が異様に小さいことだろう。

序盤は結構ぶいぶい言わせていたのだが、敵モンスターが私のモンスターと同マスに召喚されてぶっ壊されたあたりから下降線をたどり、結局ナガミネさんがフェニックスで最後のゴールを決めて勝利した。他2人が総力戦で殺しあえばこちらが有利になるのが普通のゲームなのだが、こいつはそんなことまったくなかったぜ。

せっかくのボールゲームなのに、ボールのパスがあまり意味をなさないのが惜しい。投球距離に比してフィールドが広すぎるのが原因だ。これは4人チーム戦にすれば解消するんじゃないかと思われるので、ぜひ試してみたいところだ。もしくはボードを12×12にして、d20の代わりにd12でやるのもいいかもしれない。

もう1つ難があるとすればルールが曖昧なことで、公式サイトには膨大なFAQがあったりするが、どうせバカゲーなので、そのたびプレイヤー合意で決めていってもプレイ感は損なわれないだろう。

いろいろ文句を言ったが、バカゲー好き(どれだけいるのかしらないけど)には本当におすすめだ。さすがにメインにするにはきついので、今回のように重いゲームとセットで、デザートとして楽しむのが良い。

2012年9月26日水曜日

死ね、ロボット死ね!

死ね、ロボット死ね!(Die, Robot, Die!)


ゲーム会でもう1人を待っている間、軽くこんなんどーすかと取り出したのがこれ。Spielbox 2012年第3号のおまけゲームである。デザイナーはダンシング・ダイスのSilvano Sorrentino。といってもこのゲームではダイスを振ることはなく、純然たるアブストラクトゲームだ。



まずセットアップで、ボードの自分の陣地(左右各端2列)にダイス8個を秘密裏に配置する。なぜ秘密裏かといえば、出目を割りふるからだ。8個の出目の合計が16になるように置く。

手番にすることは3つ。まず自分のダイスが相手の基地(端列中2マス)に単独でいる場合、相手のライフを1段階下げる。これはマスト。次にダイスを1つ移動させる。これもマストで、移動条件は

  • 出目と同じマス数を必ず移動しなければならない。
  • 移動途中のマスにダイスがあってはならない。
  • 移動先のマスは空いているか、相手のダイスがあるかのどちらか。
である。つまりマスは空白であるか、ダイス1個か、両陣営のダイスが1個ずつあるかのいずれかとなる。

最後はメイで、敵ダイスへの攻撃が行える。攻撃先は自分の出目と一致したマスでなければならない。つまり5のダイスだったら自分と同じ、左上、右上、右下、左下のいずれかのマスにある敵ダイスを攻撃できる。1のダイスだったら自分と同じマスにいるダイスのみを攻撃できる。

攻撃をくらった側は相手の出目だけ自分の出目が減る。たとえば4が2に攻撃を受けると2になる。このとき0以下の出目になるようだと死亡で、ボードから取り除かれる。
攻撃側は相手の出目だけ自分の出目が増える。たとえば2で4を攻撃すると6になる。このとき6-9の出目になるようなら6になるが、10以上になると死亡する(オーバーヒートするらしい)。6で4を攻撃すると相打ちで両方死亡となるのだ。

自分のダイスが死んだら、ただちにマーカー(ブラックホールと呼ぶ)を1つ、任意の空白マスに置く。以後このマスは通過はできるが止まれなくなる。

終了条件は

  • 相手のライフを0にする。
  • 相手が移動不可能となる。
  • 相手のダイスをすべて除去する。
であり、いずれかが満たされた瞬間に勝利する。

激戦終盤図

正直あまり期待もせず、時間つぶしのつもりで出したのだが、これがけっこうなめっけものだった。相手のダイスを食うのは簡単だが、そればかりしているとどんどん出目が大きくなっていき、移動がしづらくなってしまう。6はほんとに大駒という感じで、じつに使いにくい。小回りのきく3あたりで敵陣につっこみたいが、それだと簡単に殺されてしまう。どの終了条件も実によくできていて、終盤まで3つの可能性を追いながらの戦いになる。

アブストラクトはそこまで好みではないのだが、これはいかにも攻撃している、て感じがして、雰囲気がよく出ている。おすすめ。

2012年9月19日水曜日

平日ゲーム会

昼過ぎから優雅な午後のひととき。
タナカマさん、ナガミネさんと。


ヒープ(Heap


BGGで「絵がかっちょいい複雑UNO」みたいに紹介されていて、ちっと気になっていたゲーム。
ラウンドは大きく2つのフェイズにわかれており、
  • 自分の場に車種ライン別にカードをプレイする。
  • 残りの手札を使って「指定色をフォローできなくなったら負けよゲーム」をする
第2フェイズで勝利したら、山札から何枚かを即座に自分の場にプレイすることができる。

場にプレイしたカードは特殊能力を持っており、こいつを使えば戦闘を有利に進めることができる。また誰か1人が規定枚数をプレイしたら、ゲームは最終ラウンドに突入し、この「フォローできなくなったらry」に勝てばゲーム勝利となる。

特殊能力カードを自分の場にグリッド状に並べていく――といえば思い出すのはGOSUであり、ひとの場の確認が必須なのにテキスト満載でうがーだったのだが、これはアイコン、それもけっこう判りやすいアイコンなのでそんなに苦労はない。とはいえ多くて1人につき15枚程度を把握しなければならないので、やっぱり大変は大変だ。

しかしそれよりも、後半フェイズのプレイ感がどうももったりしていて緊張感に欠けることが気になった。前半と後半の連関がうまくとれていない――毎ラウンド6枚まで補充できるので、プレイを少なめにしたり今ラウンドを捨てたりすることによって手札を温存し、次のラウンドに賭ける作戦にあまり意味はない――のも問題だし、では特殊能力コンボを重視すべきかと言えば、どうもつまらない能力が多い。突出した魅力に欠けるのである。

見た目に反して意外と地味なゲームであり、プレイアビリティや後半フェイズの緊張感維持を考えれば、こういうゲームの常として、2人が最適なんじゃなかろうか。


フェイスイット(Face-it


ここでオビ湾卿登場。今日は栄えあるDOOM例会の日でもあったのだ。
カード確認に疲弊したわれわれのために差し出された清涼剤、それがこれである。

4枚ある手札(手ディスク)から同色なら何枚でもプレイしてよく、同色接続枚数により得点。ゲーム開始時は15点持ちで、得点時は上家から奪うというのがミソで、下家を縛らないとジリ貧確定なので俺が俺がプレイがうまく抑制されている。手持ちディスクはすべて明らかなので、「いまここで得点したいが、そうすると一周してきて大量に点を取られそう」という事態にしばしば陥り、意外と繊細(つーても大したことはないが)なプレイを要求される。

可愛らしいコンポーネント、20分たらずで終わるプレイ時間、単純明快ながらも少しばかりひねりの効いたルール、まさにパーフェクトである。


フリーゼマテンテンセット2入り(Friesematenten)



お金持ちになったら勝ちの、特殊能力カード競りゲー。第2弾ではコンポーネントにキューブが加わり、展開がより多彩になった。入魂の日本語化済みで、プレイアビリティも万全だ。

それでもバランスもへったくれもないカオスゲーであることに変わりはない。高い金で得た虎の子カードを捨てられたり奪われたりすることは日常茶飯事である。だがそれがいい。気心の知れた人たちでやれば和気藹々阿鼻叫喚を楽しめる。


ドミナントスピーシーズ・カードゲーム(Dominant Species: The Card Game


タムラさん、シミーズさんが加わり6人で。2011年度の傑作ゲームの1つ、ドミナントスピーシーズのカードゲーム版。ボードゲームの方は氷河期開始時が舞台だったが、こちらは氷河期の終わり。

要は得点機会が8回ある競りゲーであり、手札補充が少ないのでどこで得点するかを見極めなければならない。下手にかち合って全戦力を投入すると、以後数ラウンドはお地蔵さんになってしまう。メインの落札以外にも、その回に提示されたアイコンを最大数出すことでちまちまと得点できるので、1回の競りに3回分くらい入ってる感じ。ただしメイン落札を1度はしていないと厳しい。

加えてもちろん、特殊カードだ。これは非常に強力なものが多く、なによりプレイして楽しいのでぜひとも引きたいのだが、比率的に少量で、おまけに総枚数が多いくせにたびたびリシャッフルが発生したりして、引けないときは本当に引けない。どうかと思う。

もっとどうかと思われるのはソフトパス(1度パスしてもまた手番が回ってきたら入札可能)なことで、Lixoなどこれを生かしたゲームもあることは承知だが、このゲームにおいてはただ間延びにしか寄与してないんじゃなかろうか。6人プレイだったことが大きいのだろうが、とにかくダレる。

あと上写真にあるように、ラウンドごとに昆虫カードは+1点とかがあるのだが、この計算が煩瑣でもう本当に面倒くさい。相手どころか自分が何点なのかもよくわからなくなってくる。というわけで4人までで、それも公文的な計算が苦にならないくらい頭脳がクリアなときにやるべきだろう。

それにしてもUrban Sprawlのこともあり、Chad Jensenというデザイナーがどんどん信用おけなくなってきたのだが、如何しましょうね。