2013年2月13日水曜日

Sixteen Thirty Something (6人ワレス会)

仙台のぽちょむきんすたーさんの上京に合わせ、過去5、6回ほど行われてきたワレス会だが、ここ半年ほどご無沙汰となっており、メンバーの欲求不満もやばいところまできていて、このままでは犯罪者を生み出しかねないということで、急遽実行されることと相成った。それも6人会なので、ここは数年前にeBayで入手し、サマリーまでつくっていたものの、やる機会のまったく見い出せなかったこのゲームを投入するに絶好ということで、半ば無理矢理押し込んだのである。


Sixteen Thirty Something...



Warfrog1995年作品。The Martin Wallace Ludographyによれば、彼の2作目であるらしい。このリストでは処女作となっているLords of Creationが、BGGを見るかぎり「およそワレスらしくない」作品とされていることを鑑みれば、実質的な第1作と言えるのかも知れない。ほとんど同人のようなものだった(よく知らないが)当時のWarfrogらしく、コンポーネントは非常に簡素なものだ。ボードは単色で、カードは白黒、コマの類も実に安っぽい。

ルールは後のStruggle of EmpiresやAge of Reasonの原型であるのだろうと思わせるもので、SoEを簡略化したものがAoRだとされているが、これはもっと単純だ。舞台は題名のとおり1630年代のヨーロッパ、つまり三十年戦争の真只中である。プレイヤーたちはこの戦乱の時代を駆ける主権国家のうちからひとつを選択……しない。1国につき2枚の国タイルを、準備時に3枚ずつ分配することで、プレイヤーたちはゲームに登場する9ヶ国を秘密裏に担当する。イギリスはAとBの担当、フランスはBとCの担当、ドイツはAとCの担当……等々ということになる。各ターン終了時、プレイヤーは自分の担当国の国力(およびその国に対する自分の影響力)から勝利点を得る。AとBはイギリスの国力を伸長させたい、しかしそのためにフランスに攻めこむのはBとしては避けたい。だがそれをあからさまに主張しては、自分がフランス担当だということがばれてしまい、いろいろと不利になる……。こうしてマルチ的政治による欧州情勢はより複雑怪奇度を増していく。



ゲームは(大抵)10ターンにわたって行われ、各ターンでプレイヤーたちは1回ずつ手番を行う。手番での行動は以下。

  1. 下向きになっている場札から1枚を除去
  2. 手札3枚までを1人と交換(任意)
  3. 特殊カードを2枚までプレイ
  4. 投票
  5. 手札制限数まで捨札

それぞれを詳説していこう。

1. 下向きになっている場札から1枚を除去
このゲームでは、各国の行動は投票で決定される。この投票の「票」となるものが、プレイヤーが自分の場に出している国カードである。国カードは当然だが9ヶ国分あり、1から3までのランクがついている。これが自分の前に各国別の列になってプレイされていく。たとえばあるプレイヤーの場にはイギリスの国カードが1、3、2の列で6点=6票分、フランスの国カードが2、3で5点、スペインの……というように。ところが何らかの効果により、このカード列が逆向きとなることがあり、こうなってしまうともうその列にはカードが出せなくなる。つまりその国のカードをこれ以上プレイできなくなってしまう。そして毎手番の最初に、プレイヤーは下向きの列から1枚の国カードを捨札としなければならないのだ。ただし下向き列が複数ある場合は、それら全体から1枚だけを除去すれば良い。こうして列が消えてしまえば、またその国のカードをプレイ可能となる。これは影響力の減衰過程を表している(プレイ中は老害と言われていたが、当たらずも遠からずだろう)。

3. 特殊カードを2枚までプレイ
このゲームはどろどろ政治ゲームであると同時に、手札マネジメントゲームでもある。強力な特殊カードの使い処を間違えると、無残なことになっていくだろう。国の戦闘力を高める、任意の場札を捨札にする、任意の国を不穏状態にする等、どれも実に有用だ。

4. 投票
これがこのゲームの肝と言える。手番プレイヤーは任意の国(ただし自分が影響力を持っている国)を選択し、議題を発案する。議題は基本的に「陣営変更」か「戦争」のどちらかだ。三十年戦争期に似つかわしく、各国は赤・青の2つの陣営に分かれている。おなじみの、赤は青にしか攻め込めない、逆もまた然りというやつだ。なので叩きたい相手が同陣営の場合、まずこちらの陣営を変えなければならない。勝利点のもととなる国力は、戦争で勝って相手国から奪い取るのがメインの獲得法なので(よって全国家の総合国力はだいたいゼロサムだ)、戦争はとても魅力的だ。だが攻めこんで負けた場合は、反対に相手に国力を奪われてしまうのであるが。国を動かすのはその国の担当プレイヤーではなく、あくまでも票数による多数決である。これにより、非担当弱小国の票を多く出しておいて、その国を自分担当の強国に攻め込ませ、国力を献上させるという悪辣プレイも成り立つ。戦争の解決は2つのダイスの差分が大きいほうが勝ちという後にも踏襲されたもので、軍事力等による修正がつく。

手番プレイヤーが国と議案を決定したら、各プレイヤーはその国のカードを好きなだけ場にプレイする。国カードをプレイできる機会はゲーム中ここしかない。全員がカードを出すかパスするかしたら、議案に賛成か反対かを握り競り方式で出し、票数による多数決で可決・否決される。そして、このとき負けた側に投票した者は、その国の場札が下向きとなってしまう。このため影響力保持のための阿諛追従プレイ、他列の除去を避けるためにわざと敗北投票を行って下向きにする暗躍プレイなどが頻発するが、たまにはどう転ぶかわからない決戦投票が起こったりもする。

画像はBGGから。
手番が1巡したら得点計算を行う。自分の担当する国ごとに、「その国の国力」と「その国への自分の影響力」を比較し、「低い方」が得点となる。たとえばフランス担当で、フランスの国力が5、影響力が3なら、勝利点は3点だ。これを手持ちタイル3枚分行い、合計したものがこのターンの勝利点となる。この勝利点申告によって、プレイヤーの担当国がだんだんと明らかになっていく。そしてスタートプレイヤーがうつり、勝負は次ターンへと続く。もし終了ターンが8ターン目だったらダイスロールが行われ、1が出たら即ゲーム終了となる。同様に9ターン目の終わりに1か2が振られても終了だ。終了しなかった場合、10ターン目が完結したらゲーム終了となる。昔のゲームでたまに見かけるこの終了条件は、多人数マルチの「いつトップ目に飛び出すか」問題に、荒っぽいかたちでジレンマを加えたものだろう。

この部分だけではなく、このゲームはいろいろと「荒っぽい」。いわゆるマルチ的配慮が必要なゲームのなかでも、その要求度がかなり高い部類だ。しかし簡単明瞭なルール、1ターンで情勢が激変するダイナミクス、複雑政治状況のなかでのどろどろ交渉の魅力は、まさにこの荒さから生まれているものだとも言える。


6人会でなければ投入できなかったのは、このゲームがほぼ6人専用だからだ。それ以外の人数だと1人だけが担当する国家がでてきてしまい、そのプレイヤーの勝利はほぼ確実に無くなってしまう。加えてBGGのコメント等を見れば解るように、添付のルールをそのまま適用すると、ほとんど破綻したゲームになってしまう。具体的に言うと国カードをいくらでも出せてしまうので、単純なカード引きゲーになってしまうのだ。これを修正するものとして、PG:DBにヴァリアントが紹介されている。これは「1国に出せるカードは1プレイヤーにつき7点まで」「手番終了時、『場札と手札を合わせて』13枚まで捨札」という実に簡単なものだが、適用してみたところ効果は抜群で、カード引きゲームがカードマネジメントゲームに生まれ変わった感すら受ける。

他にもBGGにはファンのつくった2版ルールがあり、ドロー枚数変更や手札制限変更に加え、イタリアの導入(国タイルや国カードが増える)や捨札のピックアップなど、大幅にリファインされている。私は上のヴァリアントで十分満足できたので、わざわざカードやタイルを自作してまで(ファイルはすべてBGGに上がっている)プレイしようとは思わないが。





さて、ワレス会である。
ぽちょむきんすたーさん、A葉さん、かろくさん、ふうかさん、たむらさんと。

第1ターンはほぼ各国の陣営決め(ゲーム開始時は全ての国が、どの陣営にも加入していない)で終わり、得点計算へ。ところがA葉さんの得点が異様に高い。場札と各国の国力(ゲーム開始時は不均等であり、ハプスブルクは5点だが、イギリスは1点だったりする)が比較され、担当国3つのうちの2つはドイツであることを看破される(ドイツの国力は5点。2枚持ちならそれだけで10点だ)。そして始まる対ドイツ大攻勢。2ターンの時が経ち、大げさではなくドイツは廃墟となる。やはり同一国家2枚持ちは相当に辛いものがあるので、次にやる機会があったらタイルドラフトを入れたほうが良さそうだ。

ドイツの次に覇権を握ったのはスペイン。ここは私の担当国でもあったが、確かに点が高すぎる気もしたので静観。しかしこれが第一の間違いだった。落ち込んでいく速度はとんでもないものがあり、静観などしていたらあっという間に焼け野原となってしまう。そして国力0と化した国土を復興するには、途方もない労力を使うのだ。ここはばれてもいいから陣営をとっとと変え、弱小国程度の位置で停止させるべきだった。

スペインが落ちぶれたあとは大英帝国が伸びた。ここはたむらさんが2枚持ちだったのだが、最初は国力1点なので目立たず、スペインがたこ殴りに合っている間に軍事力を高めてそうそう手を出せなくし、満を持して表舞台に登場するやいなや死に体のスペインからダイスロール無しで(修正を入れると絶対勝利)国力を2奪うという極悪非道な技を見せた。

しかしやはり1人で1国担当は辛いものがあったのか、不穏カードや暗殺カードが飛び交い、さしもの帝国もゆっくりと瓦解していった。その間隙をぬい、スペイン担当に見せかけて実は担当していなかった(私のスペイン援助が遅れたのはこのせいでもある)ぽちょむきんすたーさんが抜けてきた。スペイン没落で点が下がるだろうと思われ、静観されていたのが著しい伸長を見せたのでついに露見したのである。しかし私の恨みを込めた暗殺者が放たれ、強国フランスへの影響力が消失してしまった。

こうなると強いのは目立たない中堅国家を複数手中に収めている人、もしくは強国担当であることはわかっているのだが勝利点をあまり稼いでいない人である。前者の代表はふうかさんで、後者の代表はかろくさん。勝利点マネジメントが冴えわたっている。


私はどうしていたかというと、スペインが壊滅したせいで得点源の3分の1を失い、それならばとハプスブルクの軍備を補強し、他国への侵攻作戦を試みた。同国担当のふうかさんと連携し4回連続で軍勢をさしむけたのだが、これがすべて返り討ちにあって国力を献上し続け、哀れハプスブルクは4等国家にまで落ちぶれてしまった。しかしダイス運だけに敗北を語らせるわけにはいかない(確かに悪かったけれども)。そもそもこのような作戦を実行せざるを得なくなった段階で、私は負けていたのである。スペインを助けるべきだったし、もう1つの担当国のポーランドを序盤から育てておくべきだったのだ。はっきりと、グランドデザインレベルでの敗北である。

そんなダメプレイヤーのことはどうでもいいとして、ゲームは8ターン目が終了。ここで1が振られれば、斜陽国家イギリスが最後の意地を見せて勝利、だったのだが出ず。9ターン目にはふうかさんが走るが、1、2は振られず。緊迫の10ターン目は、かろくさんが僅かの差でかわして勝利となった。お見事でございました。


プレイ時間はインスト込みで5時間半ほど。メンバーに恵まれたのもあるが、正直予想を大きく超える面白さだった。ふうかさんの言葉を借りれば、まさに「飽きないダレない面白い」だ。この1回で終わらせるのはもったいない、実にもったいない、もったいなさ過ぎる。1年後か、2年後か、いつになるかは分からないが、必ずまたプレイするだろう。

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